もて介 1
井上三太 秋田書店 ¥810
(2014年4月18日発売)
桑田もて介、40歳。職業は映画ライター。
美人の奥さんとの間に子どもはナシ、奥さん方の親が建ててくれたとおぼしき二世帯住宅に住み、気心の知れたライター仲間と構える共同事務所は野郎どもの遊び場の様相。ある意味、かなり優雅な暮らしぶりだ。
ライターとしては儲かってなさそうだが、仲間と好きな映画をしゃべり倒すトークイベントをやったり、そこそこの人気者。オールで遊んで帰っても、ちゃんと奥さんが待っててくれるという恵まれた環境にありながらも、人の欲望ははかりしれないもので……。
もて介の夢は――「ギャルとヤッてみたい」!!
愛嬌はあるがお世辞にもイケメンとは言えないもて介、さすがに果たせぬ夢かと思いきや……ある日、もて介は女の人の心の中が読めてしまう力を手に入れてしまったのである。
飲みの席で隣になった女の子の「さらってくれないかなぁ」なんて心の声が聞こちゃったら、こわいものナシに決まっている。ついには憧れの、かわいくってグラマラスなギャルとのデートも実現することに!
純愛もいいけど、「モテたい」という欲望もまた素直なもの。
もて介と妻の間は決して冷えてはいないけど、それとこれとは別なんだという気持ちがストレートに描かれているのが小気味よい。
女の目線から読んでも不思議と腹が立たず、むしろもて介はじめ肉食な女子キャラたちのエネルギッシュさが痛快に感じるのだ。かなりのページ数が割かれるH描写も濃厚で、抜群に見せてくれる。
妻はいるけどやっぱりモテたい……男の本音とロマンが炸裂する、これは平成の『ヒゲとボイン』(小島功)ではないだろうか!?
これからもて介がどんなモテ街道を進んでいくのか、そしてコトはそうそううまくいくのか……どんなドラマが待ち受けているのか楽しみだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」