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『鴨の水かき』第2巻 空木哲生 【日刊マンガガイド】

2015/07/06


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『鴨の水かき』第2巻
空木哲生 KADOKAWA \620+税
(2015年6月15日発売)


男女3人所帯の弱小デザイン事務所を舞台に、タイトルよろしく、一見優雅に見える業界の水面下のドタバタをユーモアたっぷりに描き出す『鴨の水かき』。

最終巻となる第2巻では、彼らがオフィスを構える商店街からの依頼で「商店街おこし」に取り組む様が描かれる。 この苦境を打開するにはどんな企画が必要なのか? クライアントの要求に翻弄されながらもともに悩み、理想と現実の間で四苦八苦しながらも、与えられた状況下でベストを尽くそうとあがく彼らの仕事ぶりは、デザイン/広告関係者のみならず、どんな仕事にも適用可能で、思わず「あるある!」と膝を打ちたくなるリアリティにあふれている。

「ニコニコと 当たり障りなく 作ったものが 健全か!?」
「仲良しこよし だけじゃ いい仕事は 出来ないよ」
「結果を 出すために NOと 言う事も 必要」
といったユーモアとペーソスこもる決め台詞&ポーズでミュージカル仕立てに描いたシーンは、本作最大の見せ場。

「仕事とは、働くとは何か?」という一大テーマについて、熱血型ヒロインを軸とする群像劇スタイルでコミカルながらも鋭く斬りこんでみせるあたり、『働きマン』『重版出来!』にも通じるが、本作のダイナミックな身体表現は、もはや「お仕事マンガ」というより「労働人情活劇」と呼びたい独特の個性だ。

これ案外、舞台化したら化けるかも…? なんて思いつつ。とりあえず、働く人は全員必読!
明るいビジョンが描きにくい時代だからこそ、厳しい現実の中で切磋琢磨しながらもたしかな喜びをつかみ取ってゆくヒロインの姿は、読む人に等身大の勇気と希望を与えてくれるはずだ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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