『クズの本懐』第5巻
横槍メンゴ スクウェア・エニックス \562+税
(2015年6月25日発売)
能動的ビッチ。
自分に自信があるから、自分の価値を振りまいている。常に自尊心は満たされている。
自尊心がほしい人間。
自分に自信がないから「他人の評価」を通じて自分の自尊心を取り戻そうとしている。
作中でヒロインが考えた「人に媚びる心理」、いわば「クズ道」を大きく2つにわけたものだ。
この物語は当初、少女・花火と少年・麦が、お互いの本当に好きな相手と恋愛関係になれないので、2人で擬似恋愛をすることで慰めあうというものだった。
同意の上で、擬似恋愛するんなら別に「クズ」ってほどではないのでは?
ところがここにきて2人は周囲を巻きこみながら「クズ」度がグングン上昇!
花火が好きなお兄ちゃんこと、彼女らの学校の教師・鳴海は、麦の好きな元家庭教師で、これまた学校の先生の茜が好き。花火と麦は、2人に寂しい嫉妬をしていた。
じつは、この茜がクセモノ。鳴海が自分に告白してくるのをわざと花火に見せたかと思えば、まったく違う男性と遊んでみたりと、人心を弄ぶのが趣味の悪女だった。
5巻の花火は、茜の「余裕のあるビッチ」っぷりに、激しく淀んだ感情が湧き起こる。
茜に負けたくない。
JKであることをいかし、茜と遊んでいた男性を誘惑。「奪う」快感を得ようとする。
執着されたい。夢中にさせたい。自分に価値があると思わせたい。そうやって自尊心を取り戻そうとする花火。
ああ、花火ちゃん。クズロード突入だよ!
いっぽう麦は、彼に恋をし続けてきたモカという少女とデートをしてみたり。
モカは麦を、抱きしめ、キスをする。彼女の心のなかで、麦に彼女がいようと触れたいし求められたい、と欲望が蠢き、止まらなくなる。
最初にあげた2つのクズ道。
今のところ、麦も花火もモカも後者だ。このままで本懐をとげられるのかはまったくわからない。
ただ「とりあえず先延ばし」状態から、自分がどういう「クズ」であることを認識し、今なにをしているのか、客観的に見られるようになってきている。
ここからさらにクズ道を爆走するか。はたまた元の気持ちに戻って、好きな相手に面と向かうか。
どちらかひとつなんてことはない。どちらかに偏っているものの、だいたいいつもグレーなのだ。
この作品の少年少女の白黒度合いは、おそらく読者の人生経験で変わってくるはずだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」