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『サボテンの娘』第3巻 桐原いずみ 【日刊マンガガイド】

2015/08/07


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『サボテンの娘』第3巻
桐原いずみ 双葉社 ¥600+税
(2015年7月10日発売)


80年代に子ども時代を送ったならば、当時の感情が、どんどんよみがえってくる作品だ。

1985~6年の愛知県が舞台。主人公は、小学6年生の少女たち。
元気いっぱい悩みもいっぱいの優子、おとなしい転校生の美少女・真由美、サバサバした性格でものをはっきりものを言う香織。
そんな仲よし3人組を中心に、小学生の日常を丁寧に描いている。

劇的な出来事は、ほとんど起きていない。
雨のなかウシガエルの鳴き声でびっくりしたり、バレンタインチョコを必死に作ったり、牛乳キャップ集めに励んだり、結婚式の菓子まきで必死になって拾ったり、みんなでファミコンをしたり。ごくごく普通の生活だ。

小学生時代はそんな当たり前のことに、一喜一憂する。小さなことで悩み、迷い、笑い、泣いた。
自分の悩みが世界の何もかものように感じるものだ。

たとえば第3巻では『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を名古屋の街のなかに見に行く回がある。
小学生にしてみれば、子どもだけで映画を見にいくのは大冒険。一生忘れられない思い出だ。

読者の記憶のトリガーになるのが、80年代半ばに話題になったものの数々。
キン消し、プールの消毒槽、日航機墜落事件、水銀の体温計、スケバン、ウォークマン。かなり細かくネタがつめこまれている。

さてタイトルの「サボテン」。丁寧に育てると50年から100年生きるものもある。
人生はサボテンのトゲのように、山あり谷あり。
年上の友人チカちゃんは、悩んでばかりの優子にこう言う。
「長い人生、んなもん些細なことだよ」

登場人物たちが実在するならば、今アラフォーで、バリバリ働いていたり、親になっていたりと考えると、なかなか感慨深い。
最終巻の3巻は小学校卒業まで。
できれば中学時代、90年代にさしかかる様子も読んでみたいと感じさせられる、青春グラフィティだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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