『中学性日記』第4巻
シモダアサミ 双葉社 ¥620+税
(2015年7月10日発売)
第二次性徴期の中学1年生男女を描いた思春期オムニバスがついに完結!
授業参観やバレンタインといった小さなイベントはあれど、とくにこれといった大きな事件が起こるわけでもない、ごく平和なクラスの日常が様々な人物を主人公にしながら、1話完結のシンプルなスタイルで描かれてゆく。
男子のことが大嫌いな真田さんに、真田さんの妹が好き(で俺、ロリコン!?と悩む)日野くん、クラス一のモテ男子・松本くん、松本くんのことが好きな吉川さん、吉川さんに好かれようと必死の前野くん……と、読み進めてゆくごとに、クラス内の人間関係がだんだんわかってゆくのが楽しく、クラスの一員になった気分でついつい見守りたくなる。
「性長」と銘うつわりにエロ要素はごく控えめで、この年代特有の自意識の地獄絵図的なものも皆無ゆえ、思春期モノとしては物足りないと感じる人もいるだろう。
しかし、すべての人物をそれぞれ個性豊かにチャーミングに描いたうえで、幼い男子と大人びた女子、異性をはじめとする大人の世界への好奇心と嫌悪感……といった「自我の芽生え」をあくまでほのぼのと描かれていて、そういや小学校を卒業したばかりの中1って、まだまだこんな感じだったかも……と甘酸っぱい気分になると同時に、ホッとしたり。
ドロドロ殺伐としてない思春期ものが読みたい! という人に、とくにおすすめ。中1って男子も女子もかわいい……とホッコリなごめます。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69