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『ACMA:GAME』第12巻 メーブ(作)恵広史(画)【日刊マンガガイド】

2015/08/12


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『ACMA:GAME』第12巻
メーブ(作)恵広史(画) 講談社 ¥429+税
(2015年7月17日発売)


「週刊少年ジャンプ」の制作の舞台裏を描いたルポマンガ『ジャンプの正しい作り方!』を読んでいて、ちょっとびっくりする場面に遭遇した。
作中に登場した「少年ジャンプ」の副編集長が、今の「少年ジャンプ」には「友情・努力・勝利」というテーマはない、と言いきっていたからだ。
「少年ジャンプ」は「友情・努力・勝利」に拘っている、と思っていた筆者には衝撃的であった。
ただし、「まぁ少年マンガを作っていれば 自然発生的に その3つのテーマは出てくるしね」という発言もあったので、まったく意識していないわけではないようだが、それも時代の流れといえようか。

そうしたなか「少年ジャンプ」のライバル誌「少年マガジン」に「友情・努力・勝利」をテーマに据えた作品が出現した。それが現在連載中の『ACMA:GAME』である。

世界中で発生した、突然全財産を譲渡させられる怪事件。その裏には「悪魔のゲーム」というものの存在があった。
「死神」を現実のものとし、その世界観を前提に主人公たちの駆け引きを組みあげた『DEATH NOTE』と同様に、「悪魔」を実在するものとして、対戦型ゲームを連鎖させて物語を作りあげたのが本作『ACMA:GAME』なのである。

まず「悪魔のゲーム」のルールを説明しよう。
「悪魔の鍵」により形成された閉鎖空間がゲームの場となる。ゲームの出題は、その場に召還された悪魔が行う。悪魔はゲームマスターとして中立の立場でゲームを判定する。
プレイヤーはそれぞれ等価値のものを賭け、敗者は賭けたものをすべて失うというものだ(その結果「全財産を譲渡させられる怪事件」が発生したわけだ)。

ここで登場人物紹介も兼ねて、より具体的に説明をしていこう。
織田照朝(おだ・てるあさ)は、高校3年生にして日本有数の財閥・織田グループの総会長である。その地位は親の七光りではなく、容姿端麗・頭脳優秀・運動神経抜群の照朝が実力でえたものだ。
その照朝にゲームを挑んだのが、イタリアマフィアのマルコ・ベルモントである。
マルコが召還したゲームマスター、つまり悪魔のガドが選んだゲームは「真偽心眼 True or False」(「悪魔のゲーム」はすべて漢字4文字で表現され、その内容を端的に表す英文がつく)。問い手の発言の真偽を見抜くゲームである。
問い手の質問に対し、解き手が真偽を見抜けば1点を獲得し、見抜けなければ問い手が1点をえる。問い手と解き手は1問ごとに交代し、3点先取したほうが勝ちとなる。
照朝1点先取後、問い手となったマルコが「この部屋を中心として 半径1kmの球状範囲内にコンビニエンスストアは4軒以上ある」という。
確信をもって「True」と口にした照朝だったが、ガドはマルコの勝利と判定する。そこには「悪魔の鍵」の所有者であるマルコが持つ「悪魔の力」が影響していたのだ……。
最終的に照朝はマルコの「悪魔の力」の正体を見抜き勝利するわけだが、先に紹介したコンビニの問いのように「必勝間違いなし」と思った回答が逆の結果に、という場面はゲームのたびに登場する。
そうした驚きに満ちたストーリー展開が本書の魅力なのである。

「悪魔のゲーム」は、謎の組織・グングニルのトップである先導者(The Guide)が仕掛けたものであった。
照朝たちが倒すべきは、このグングニルという組織なのだが、この組織は日本を支配してしまうなど、じつにスケールがでかい(国会に統一会派「グングニル」が出現し、一党独裁状態になったのだ)。
この組織に照朝は戦いを挑むわけだが、彼は孤立無援ではない。織田グループの社員やマルコをはじめとするゲームを通じてえた仲間がいる。そうして、その仲間はゲームを重なるたびに増えていくのである。

改めていうが『ACMA:GAME』は、「友情・努力・勝利」といった王道的な要素がしっかりと盛りこまれた少年マンガなのである。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。最近では「名探偵コナンMOOK 探偵少女」(小学館)にコラムを執筆。

単行本情報

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