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『MAJOR』も『ダイヤのA』も『おお振り』も!? 高校野球マンガは意外と甲子園に行ってないという事実 【週刊「このマンガ」B級ニュース】

2015/08/18


南「甲子園つれてって」
俺も――ッ! 俺もつれてってくれ――――ッ!!!!

今年で100周年を迎えた“夏の甲子園”も、いよいよ準決勝(19日)と決勝(20日)を残すのみとなった。クソ暑い日が続くなか、仕事や勉強なんか正直やってられないデショ?
甲子園の大銀傘の下、ビール片手に高校野球を観戦なんかできたら、こいつぁ極楽だァ。だからね、いますぐ甲子園につれてってほしいワケですよ!

そこで今回は「甲子園につれていってくれる」マンガを特集する。
というか「野球マンガを適当にみつくろえば甲子園なんて山ほど描かれているんじゃないの?」とお思いのそこのアナタ! たしかに高校野球はマンガの題材として常に人気が高く、少年誌を開けばかならず1作品は載っているほどだ。

しかし、高校野球マンガは、甲子園出場まで描かれないケースが意外と多いのである。
満田拓也『MAJOR』の主人公・茂野吾郎(聖秀学院高校)は地区予選のベスト8どまりだったし、寺嶋裕二『ダイヤのA』ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』は、主人公が1年生の時点では甲子園出場を果たしていない。

そもそも甲子園出場というのは、高校野球においてはひとつの到達点であり、作品全体を通じての「目標」となる。野球マンガといっても、なかなか読者を甲子園につれてってはくれないのだ!
では、昔から人気のあるスタンダードな高校野球マンガは、読者を甲子園までつれてってくれたのか? 作品名は知っていても「で、甲子園には出たの?」と結果をたずねられると、意外とすぐには思い出せなかったりするものである。
といったところで、メジャータイトルにおける甲子園出場実績をみていこう。

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『大甲子園』第1巻
水島新司 秋田書店 ¥400+税
(1983年8月発売)

読者を確実に甲子園につれてってくれるマンガ作品の代表例は、もちろん『ドカベン』(水島新司)だ。

“ドカベン”こと山田太郎の高校野球生活は、3年春までが『ドカベン』、3年夏は水島ワールドのアベンジャーズ的作品『大甲子園』で描かれる。
山田在籍時の明訓高校は5大会連続で甲子園出場を果たし、うち4回の優勝を成しとげた。
3年時の夏大会、『球道くん』の主人公・中西球道率いる青田高校との準決勝は、「投げも投げたり、打ちも打ったり」というべき名勝負のオンパレード。野球マンガの歴史に残る一戦といっても過言ではない。

なお、『ドカベン』と『大甲子園』では、甲子園球場にラッキーゾーンが設置されていたり(92年に撤去)、スコアボードの時計の下に「SEIKO」のロゴが入っていたり(現在はCITIZEN)と、いまとは違う甲子園の姿を拝めるのもポイントだ。


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『タッチ 完全復刻版』第1巻
あだち充 小学館 ¥457+税
(2012年10月12日発売)

さて、冒頭のセリフを言った浅倉南さんは、いまさら説明の必要はないとは思うが、あだち充『タッチ』のヒロインである。フジテレビの夕方のニュース番組では「南ちゃんを探せ!」というコーナーが組まれるほど、当時は国民的人気を誇った。

上杉達也(3年)を擁する明青学園高校は地区予選で優勝を遂げ、見事に甲子園出場のキップをつかむ。しかし、そのあとに告白のアンニャモンニャのエピソードに突入し、甲子園での試合はさっぱり描かれず。エピローグでは、甲子園優勝の記念皿が明青学園に飾られているので、どうやら優勝した模様。ちゃんと甲子園にもつれてったんでしょうね。うらやましいぞ!

ちなみにこの優勝絵皿は、『タッチ』から26年後の明青学園を舞台にしたあだち充の最新作『MIX』にも登場するので探してみよう。


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『講談社漫画文庫 巨人の星』第1巻
梶原一騎(作) 川崎のぼる(画) 講談社 ¥620+税
(1995年6月2日発売)

野球マンガの金字塔『巨人の星』(原作:梶原一騎、作画:川崎のぼる)は、プロ野球の世界が舞台と思われがちだが、序盤は幼少期の星飛雄馬を描いている。
そこで飛雄馬は早稲田実業高校時代の王貞治氏(今年の夏の甲子園では始球式を務めた)とも出会っている。

青雲高校に進学した星飛雄馬は、花形満率いる紅洋高校と甲子園の決勝で対決。負傷をおして登板した飛雄馬は、白球を血に染めながら熱投するも力及ばず敗北してしまう。
試合後、飛雄馬と花形はお互いを讃えてマウンド上で熱い抱擁を交わすが、汗と涙で顔をくしゃくしゃにした花形が「も もう一度きみを だきしめさせてくれたまえ」というシーンは、とてもとてもとても胸が熱くなる。
宿命のライバルの抱擁! ロッキーとアポロが浜辺で抱き合うシーン(『ロッキー3』)にトキメキを覚えた経験があれば、絶対に見逃せない熱ハグだ。うらやましい……ぞ!?


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『青空エール』第1巻
河原和音 集英社 ¥400+税
(2008年12月25日発売)

一風変わったところでは、河原和音『青空エール』にも注目したい。

主人公の小野つばさは白翔高校に入学し、吹奏楽部に入学。甲子園のスタンドでトランペットを吹くという夢に向かって邁進する。
野球部の同級生・山田大介に励まされ、2人の仲は急接近。「吹奏楽部でがんばる部活マンガ」と「甲子園につれてって」のハイブリッド型といえるだろう。

一生懸命で一途なつばさみたいな娘に応援されたら、そらぁ高校球児は死ぬ気でがんばりますよ。
「男は好きな女のためだと、自分でもおどろくようなことができちまうもんなんだよ」(『タッチ』上杉達也)ってなもんである。うらやましいぞ!


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『集英社文庫 レベルE』下巻
冨樫義博 集英社 ¥638+税
(2010年10月15日発売)


そして忘れてはならないのが、冨樫義博『レベルE』。
宇宙人を題材にしたオカルトSF作品である。「週刊少年ジャンプ」での連載開始は1995年だが、一部ではカルト的な人気を誇り、2010年にテレビアニメ化。

筒井雪隆が所属する如月高校野球部は、山形県予選決勝に向かうバスの車中にいたハズが、気づくと甲子園球場に。とある超常現象により、強制的に甲子園につれていかれて、閉じこめられてしまったのだ。そこで雪隆ら野球部員たちは、そもそもの原因や、もとに戻る方法を探ることになる。
いくら「甲子園につれてって」と言っても、こんな方法でつれていかれるのはさすがに困る。うらやまし……くはないぞ。


甲子園に行った気になれるマンガを読みながら、過ぎてゆく夏の大会に思いを馳せてみるのもイイんじゃないでしょうか? 
まためぐり来る夏の日に心ふるわす人がいるんですよね。

単行本情報

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