『砂の栄冠』第18巻
三田紀房 講談社 \562+税
(2014年7月4日発売)
興行としての側面から高校野球にアプローチした三田節全開の“ブラック甲子園へ行こう!”もターニングポイントを迎えた。
樫野野球部を愛し、練習や試合を見守り続け、極秘の強化資金として1000万円という大金を七嶋に託した老人“トクさん”が急逝したのだ。
一方、春のセンバツに21世紀枠で出場し、ベスト4まで勝ち進んだ樫野野球部は、新キャプテンのグンを中心とする細眉派と七嶋を中心とする太眉派の対立が尾を引き、夏の埼玉県大会では初戦から大苦戦を強いられる。
それでも地力を見せて、どうにか決勝まで駒を進めた矢先に飛び込んだトクさんの訃報……。意気消沈した七嶋は、ライバル・浦和秀学にめった打ちにされるのであった。
ところが、そんな絶望的な状況下で一筋の光明が。ワンマン体制で県大会に臨んでいた七嶋がサンドバッグ状態になったことで、壊れかけていたチームワークが復活したのだ。
どれだけ七嶋が打たれても点を取り返し、随所で堅守を見せる樫野ナイン(監督のガーソはあいかわらず地蔵だけど)。はたして野心あふれる七嶋のハートに再点火はなるのか?
爽やかさの欠片もないはずの高校野球マンガが、甲子園を目前にして激熱の展開を迎える。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
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