『どこまで行けるかな?』
藤末さくら 講談社 ¥752+税
本日は「8.19」で「バイク」の日。
バイクの安全運転講習会など、さまざまなイベントが全国で行われる。日本二輪車普及安全協会は「バイクの日スマイル・オン2015」をベルサール秋葉原で開催(12時~16時まで)。
お堅い安全講習ではなく、仮面ライダーガールズショーのようなアキバならではステージもあるそうなので、興味のある方は足を運んでみてはいかが?
てなわけで、本日の当コーナーは当然ながらバイクマンガなのだが、このジャンルはあまりにも名作がありすぎて、何を取り上げたらいいのか、小一時間悩んだ。『湘南爆走族』や『バリバリ伝説』、『特攻の拓』のようなヤンキー系&カットビ系は安全対策に重きを置いた記念日にそぐわない。
思案の末に選出したのは、藤末さくらのバイク免許取得エッセイ『どこまで行けるかな?』だ。
藤末といえば『あのコと一緒』などで知られる少女マンガ~ヤングレディース系の中堅作家。現在は鬼瓦職人の鬼師を目指す女性を主人公にした『さんかく屋根街アパート』を「BE・LOVE」にて連載中だ。そんな藤末が2011年から2012年にかけて同誌で連載していたのが『どこまで行けるかな?』である。
ひょんなきっかけでバイクの中型免許を取ろうと決意した著者。
だが、身長150センチ弱という小柄な体躯のうえに、インドア生活で体力も非常に乏しく、すぐさま困難が待ち受ける。それでも仕事のスケジュールをやりくりしてコツコツと教習所に通い、ヒーハー言いながらもどうにか免許を取得するまでの苦難の道のりが描かれる。
低身長×低体力×30代×2人の子持ちという女性漫画家でも、その気になれば中免も取れるし、400ccのバイクを操れることを証明してみせるさまは感動的だ。
免許所得後は意気揚揚とバイク購入の運びとなるのだが、旦那様も便乗して自分のマシンを買ってしまうのがほほえましい。
このくだりを読むと、思わず「夫婦で共通の趣味があっていいですな~」などとベタな感想をつぶやいてしまうところだが、当の藤末にとってみれば、「そういうつもりで中免を取ったわけじゃないのに!」というジレンマも。
だがまあ、子育てが一段落した夫婦が2人きりでツーリングに出るなんて、仲睦まじくてうらやましいかぎりである。
なんとなくバイクに興味あるけど「免許取るのが、メンドくさそうだな~」と二の足を踏んでいるアナタにこそ読んでほしい、親切設計のオトナ習いゴトエッセイだ。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。話題の映画『ピクセル』の劇場用パンフレットに参加することになり、80年代カルチャーを復習中。