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8月26日は24時間テレビ「愛は地球を救う」初放送の日 『ブラックジャック創作秘話』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/08/26


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『ブラック・ジャック創作秘話 ~手塚治虫の仕事場から~』第1巻
宮崎克(作) 吉本浩二(画) 秋田書店 ¥648+税


1978年の8月26日、日本テレビによるチャリティー番組『24時間テレビ「愛は地球を救う」』が初放送。
今となっては数ある特番のひとつになっているものの、通常番組を放送せずに、昼夜通して特番をぶっ続けで放送することは画期的で、非常にチャレンジングな豪華番組だったのだ。

そんな『24時間テレビ「愛は地球を救う」』では、第1回から第13回まで約2時間のアニメスペシャルが放送されていた。というわけで、今回はアニメスペシャルの記念すべき第1回作品である『100万年地球の旅 バンダーブック』制作当時の現場模様をうかがい知れる、『ブラックジャック創作秘話』の1エピソードを紹介しよう。

マンガの神様・手塚治虫は一時期、アニメーション制作スタジオ・虫プロダクションの倒産により自宅を売却するほどの大ピンチに陥る。その後、『ブラック・ジャック』『三つ目がとおる』などの名作を生み出すことでみごとなカムバックを果たす。その時期を中心に、手塚先生の伝説敵な言動の数もが関係者たちの口から語られる本作。
そんな手塚先生が、1973年に「アニメはもうやりませんから大丈夫です!!」と、のちに手塚プロダクション社長となる松谷孝征氏に語る場面からこのエピソードは始まるのだが、そのわずか2ページ後に冒頭の宣言を撤回するのがもう最高である。
連載を8本抱えながらも「松谷氏!! アニメをやります!!」「世界初の2時間TVアニメですよ!! 世界初の!!」と大興奮しながら宣言する手塚先生。こうして『100万年地球の旅 バンダーブック』の制作が始まることに。

そこからは、現手塚プロダクション著作権事務局局長・清水義裕氏の口から、バイトとしてアニメの原画・動画を外注したスタジオに依頼・回収する制作進行として手塚プロダクションで働いていた当時の思い出が語られるのだが、例によって例のごとく現場は死屍累々!
手塚先生の絵コンテはまったくあがらず、放送2カ月前に現場を取り仕切る制作担当デスクが失踪するという、「万策尽きたー!」な状況に。
そんななか、失踪したデスクに代わってバイトの清水氏が制作現場を取り仕切るはめになるのだが、手塚先生のコンテと原画がまったくあがらなかったりと、トラブルは収まらない。

その後、放送1カ月前を切った時点でやっとラッシュ(試写)チェックにこぎつけるのだが、疲れきったスタッフたちを手塚先生による「リテイク!」の嵐が襲う。
このへんはもう、読んでるこっちもヘトヘトです。

こうして、手塚先生の純粋すぎる作品への熱い思いが伝染したスタッフ陣の尽力により、なんとか無事(?)に『バンダーブック』は完成。
好視聴率を得たことで、その後も24時間テレビ内のアニメ枠で手塚プロ作品は放映されるのだが、ギリギリの進行はその後もいっさい改善されなかった模様で、『バンダーブック』以降に放映された『海底超特急マリンエクスプレス』のギリギリ納品エピソードなど、修羅場伝説は枚挙にいとまがない。

そんなシビれるエピソードの数々のマンガ化は、描かれる熱い現場模様からパワーをもらえるのが大きな魅力だ。
今後も、数々のこういった伝説がマンガで語り伝えられていくことを切に願う。(けっして体験したくはないけど)



<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
Twitter:@gakuton

単行本情報

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