『バトル・ロワイアル』第1巻
高見広春(作) 田口雅之(画) 秋田書店 ¥533+税
9月4日は「くしの日」。由来はいうまでもなく、9(く)・4(し)の語呂合わせだ。
美容関係者らがくしを大切に扱い、また、美容に対する人々の認識を高めてもらうために1978年に制定され、全国美容週間実行委員会が様々なイベントを実施している。
マンガにおける「くし」の存在意義は、すなわちおしゃれということになるのだが、音が「奇し」につながるということもあり、くしを使うことに呪術的意味を象徴させることも多い。 「中学生の少年少女が殺し合いをする」という過激な内容から映画化の際に物議をかもし、話題となった高見広春の小説『バトル・ロワイアル』を、『バロン・ゴング・バトル』の田口雅之が残虐&セクシー描写もさらに上乗せして描いたマンガ『バトル・ロワイアル』では、不良学生の“絆”を象徴するアイテムとしてくしが登場する。
プログラム(生存者がひとりになるまでお互い殺し合いをさせられる)の対象となった3年B組男子、出席番号17番の沼田充は、ロクでもない家庭に育って中学に上がるや不良デビュー。さっそく上級生に目をつけられてボコられているところを桐山和雄に助けられた。
冷徹に上級生たちを“壊し”てのける桐山に心酔した沼田は、彼を王と仰いでみずから髪をオールバックにくしけずり、その日から桐山軍団の参謀格を自任する。
そして「今回もボスは俺たちを率いて、くだらないプログラムをぶっ潰してくれる!」と勢いこんで待ち合わせ場所に向かった沼田は、そこで驚愕の光景を目にした……。
ネタバレしてしまうと桐山は本作のいわゆるボスキャラで、およそ人間的感情が欠落したキリングマシーン。沼田の末路もだいたい想像がつくことだろう。
だが、そういった希望と絶望のせめぎ合いこそが本作の魅力。沼田の散りぎわも単行本でたっぷり堪能していただきたい。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。ただいま好評発売中の『バケモノの子 オフィシャルガイド』、「『仮面ライダードライブ』フォトブック~Drivin’Album」もやってます。