『いぬやしき』第1巻
奥 浩哉 講談社 \637
(2014年5月23日発売)
いやがおうでも「あの『GANTZ』の」といわれることになるであろう、奥浩哉の最新作。
主人公は、実年齢(58歳)よりもかなり老けて見えるため「おじいちゃん扱い」され、家族にもなんとなく疎んじられている壮年男性・犬屋敷壱郎。
その冴えない風体に加え、若くして(そうは見えないわけだが)ガンで余命宣告を受けてしまった彼が、突然のアクシデントで、異星人のオーバーテクノロジーによって全身を機械化され……と、期待に違わぬ「掴みはバッチリ!」な開幕。
機械の体になって、はじめて「誰かを助けた」という喜びから、生きる意味を実感する(実際は死んでるのに!)というアイロニーは、主人公がやたらイケメンだった『GANTZ』よりも心に響くものがあるだろう。単純にコトを暴力で解決するワケではないのもすばらしい。
……と、ここまで『GANTZ』と比較して書いているのは、じつは本作中にメタ的、かつ自虐的に『GANTZ』が登場するのを踏まえてのこと。未読の方は、その目でご確認を!
もちろん、本作の見どころは『GANTZ』関係のネタだけでない。
本巻の最後に登場する、もうひとりの機械化された体を持つ少年・獅子神皓と主人公の対比や絡みなど、素直に続きが楽しみな展開が広がっている。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。