『彼女はろくろ首』第1巻
二駅ずい 講談社 ¥429+税
(2015年8月7日発売)
主人公、鹿井(かのい)なつきは高校1年生。
純真で活発だがどこか気だるい雰囲気も備えた、趣深いたたずまいの女の子だ。
そんな彼女には、ある「特徴」がある。
居眠りで気がゆるんだ拍子に首がにょろにょろ。
幼なじみの男子に触られて興奮のあまり首がにょろにょろ。
急いで走っていると勢いで前のめりに首がにょろにょろ……。
と、暮らしのなかでことあるごとに首が2、3メートルのびる体質なのだ。
ろくろ首JKのろくろ首ならではの日常風景に寄り添う本作のタイトルは、その名も『彼女はろくろ首』。直球です。
pixivで公開された同題のショートマンガを原型に、商業版ではフェチシズム重視のシチュエーション集としてより洗練された内容になっている。
長々のびている最中の首筋を、冷たいジュース缶でつーっとくすぐられてなつきちゃんがビクンビクンと感じる場面や、おばけをこわがるなつきちゃんが首にペンで除霊のおまじないの呪文を書きこまれてやっぱりビクンビクンと感じる場面を見れば、「なるほど、このためのろくろ首か」とすぐ伝わるだろう。
つまり、首まわりの肉感的なエロスが、ろくろ首という設定で強調されているのだ。
たとえば理科の授業ででんぷん分解実験のために唾液を出すのを恥かしがったなつきちゃんが幼なじみの男子につかまって首から耳下にかけて唾液腺マッサージされる絵ヅラに注目してもらいたい。
これは実際のところ、ろくろ首でなくても成り立つシチュエーションではある。
しかし、ろくろ首設定のおかげで読者の意識は少女の首に集中する。
そうしてインパクトが何倍にも増すのだ。
ところで最近、ろくろ首がメインキャラになっている作品がよく視界に入ってくる。
「ヤングジャンプ」で連載中の『妖怪少女―モンスガ―』はメインヒロインがろくろ首だし、梅澤春人の新作『妖怪伝奇Roku69Bi』も7月に単行本第1巻が出たばかり。
また『デュラハンちゃんは首ったけ』や『モンスター娘のいる日常』に登場するデュラハン少女も見た目的には、ろくろ首と距離が近い。
首が離れる系のろくろ首といえば名作『うしおととら』のアニメ化で「飛頭蛮」のエピソードが放送されたのも記憶に新しいところである。
きちゃったかな、ろくろ首の時代……!
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7