『Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~』第1巻
高野洋(作) 菊地昭夫(画) 集英社 ¥562+税
9月9日は、数字の並びからも想像できるとおり、“救急の日”。
1982年、厚生省(現在の厚生労働省)と消防庁が、救急業務や救急医療について一般の理解と認識を深め、救急医療関係者の士気を高める日として制定した日だ。
救急医療は様々な形で発展をとげているが、そこにおいて近年注目されているのが、災害医療だ。
大地震や津波、火災、航空機・列車事故など、装備も設備も最小限のなかで最大限の力を発揮する医療。そのためのチームも実際存在している。
災害派遣医療チーム“Disaster Medical Assistance Team”こと通称“DMAT(ディーマット)”だ。
そんな彼らの活躍と苦悩を知ることができるのが、『Dr.DMAT~瓦礫の下のヒポクラテス~』(原作・高野洋、作画・菊地昭夫)。災害医療のスペシャリストたちのなかで新人隊員となった血の苦手な内科医・八雲響を中心に、壮絶な現場とそこでの彼らの奮闘が描かれている。
自らも危険な状況下に置かれたなか、冷静な判断と迅速な処理で、できうるかぎりのことをしようとするDMATのスタッフたち。しかし、限界を認めざるをえない瞬間も……。
こうした人たちがいるから救急もそもそも医療も成り立っていて、またそこには数々のドラマがある。そんなことを教えられる作品だ。
諦めないでいてくれる人たちが、そこにはいる。
救急医療というものの大切さについても、あらためて痛感させられるはずだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が発売中。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。