日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー! 今回紹介するのは『不死(しなず)の猟犬』。
『不死(しなず)の猟犬』第3巻
八十八良 KADOKAWA ¥620+税
(2015年8月12日発売)
人が死んでも、瞬間的に生き返る世界。
風邪や二日酔いや虫歯も、死ねばスッキリ復活。だから銃は人殺しの道具ではなくリセット器具。
この世界の警察が追うのは「ベクター」と呼ばれる存在。ベクターは銃で撃てば、死ぬ。復活しない。
なぜ警察がベクターを追うのかというと、ベクターを「愛した」人間は、「復活不全症(RDS)」(感染すると「死ぬ」病気)に感染するからだ。
ベクターがなりふりかまわず人に愛されるようになったら、パンデミックが起きて「人の死ぬ世界」がやってきてしまう。
感染の脅威を退けるため、警察はベクターを捕まえて、殺処分していた。
だが、ベクターを救って逃がす組織が存在する。通称「逃がし屋」。
「みんな死なない、死ぬのは病気」という世界観が、いろいろなタガを外していく作品。
たとえば逃がし屋・風間リンのアクション。彼女のガンアクションは、敵味方なし、めちゃくちゃし放題。
町中で一般人を撃ちまくって、脳漿や内臓を煙幕がわりにしても、彼女がかけぬけた後にはみんな復活する。
高速道路では走る車を次々撃って渋滞を起こし、バスに飛びこんで四方八方に乱射。喧騒を用いてベクターに近づく。
追ってきた警察官らは、両手両足をもぎとって、死なない程度に動けないようにする。殺したらむしろ元気になるからダメ。
第3巻では「白雪姫」と呼ばれる、オタサーの姫のベクターが登場する。オンラインゲームを利用して一気に十人単位の男をオフ会に呼び、セックスや恋愛トークで彼らを惚れさせて感染を広げていく。その数39人。
彼女は「死なない人間」をいたぶるのが好き。股間をカッターで切り取り、銃で撃ちぬく。確かに死なない。死なないゆえに苦しいことこのうえない。
こんな迷惑極まりないベクターでも、風間リンは「逃がし屋」として助けなければいけない。
ベクターの話によると、自分たちのいた世界は70億人いたそうだ。この世界には13億人しかいない。……おや?
血は撃ったあとにすぐに消えるし、この世界は謎が多い。
まずは、冷淡な顔で引き金を引く女性や、命を賭して追い詰めるハードボイルドな刑事が好きなら、問答無用で読むべし。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」