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『天獄 -HEAVEN’S PRISON-』第11巻 うたたねひろゆき 【日刊マンガガイド】

2015/06/11


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『天獄 -HEAVEN'S PRISON-』第11巻
うたたねひろゆき 集英社 \600+税
(2015年5月19日発売)


絵のクオリティか、ストーリーの進行を取るか。能力バトルが繰り広げられ、必殺技が見開きページで描かれるのは眼を喜ばせるごちそうだ。
が、お話は進まずに謎解きも止まりがち……。

『天獄』は2002年に連載が始まってから、年ほぼ1冊のペースでコミックスが出ていたが、今年に入って第10巻とこの第11巻が、来月7月には最終巻の第12巻が発売。連続3冊のラストスパートは、今までのペースと比べものにならない。

「神の血」を持つ不老不死の少年・空とメイドの少女・砂姫、彼らの事件に巻きこまれる普通の女子高生・透湖らを中心とした本作は、毎月読めることが奇跡と言ってよかった。
大ベテランの美少女絵師・うたたねひろゆきが精緻なタッチで、コマごとに心血を注いだ美少女たちは、メガネ×貧乳メイド、記憶を操作されながら義兄(空)に恋慕する小学生の幼女、意志を持たない半裸の生き人形。まるでフェティッシュの総進撃だ。

『天獄』のままならなさは、なまじおもしろく発展しそうな伏線が充実したこと。
神の血をめぐる空と“教団”との戦い、“教団”に属する5人の戦士クインテット、“教団”の幹部である「七つの大罪」同士の権力闘争。そしてクインテットのひとりはじつは空の娘で……と山ほどの設定があったものの、毎月20Pに満たないページで少しずつ明かされるのは、読者としてうれしくもあり辛くもあった。

毎月、次の展開に胸を焦がす連続だった壮大な物語も、いよいよクライマックス。
結末に向けて、ますます熾烈な戦いや過酷な運命が描かれる第12巻を心待ちにしたい。



<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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