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9月18日は「しまくとぅばの日」 『美童物語』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/09/18


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『美童物語』第1巻
比嘉慂 講談社 ¥638+税


沖縄の島々で使われて伝えられてきた言葉、「しまくとぅば(島言葉)」。
9月18日はこの沖縄言葉の記念日「しまくとっばの日」で、琉球方言の奨励を目的に沖縄県内各地でイベントやシンポジウムが開かされている。
この記念日が特別なのは、2006年に沖縄県の条例によって定められたものだということ。条例によって定められた初の方言に関する記念日で、9=く、10=とぅ、8=ば、の語呂合せで9月18日に制定されている。

そんな本日の一冊、『美童物語』のタイトルにある「美童(みやらび)」も琉球方言で、「少女や乙女」「その美しさ」を言い表したもの。
作者はやはり沖縄出身である比嘉慂(ひが・すすむ)。『砂の剣』『カジムヌガタイ -風が語る沖縄戦-』で戦時下の沖縄を描いてきた作者が、本作では同じく戦時下を舞台に、沖縄の精神性と死生観を優しくも力強く描き出している。

様々なエピソードが語られるオムニバスとなっているが、その繋ぎ手として登場するのが、ノロ(巫女)を祖母に持つ少女・カマルだ。
沖縄は、同地の言葉で「マブイ」と呼ばれる魂が還る島。戦時下において辛い目にも遭いながら、様々な死と死者、それにまつわる哀しみや怒りや愛おしさもたおやかに受け止める沖縄の姿がそこにある。

そのなかの一編「方言札」は、方言(沖縄言葉)が禁止され、日本語(標準語)を強要されていた学校教育の場が舞台となっている。
琉球方言もふんだんに出てくるエピソードとなっているが、それよりも際立つのは自分たちの文化を守りつつ、またいっぽうで相手のすべてを否定するわけではない沖縄の文化性だ。

「しまくとぅばの日」にこそ、ぜひ読んでほしい一作。
登場する沖縄言葉の数々が、優しく温かく心に沁み入るはずだ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が発売中。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。

単行本情報

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