日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは『ショパンの事件譜』
『ショパンの事件譜』第1巻
北原雅紀(作)あおきてつお(画) 小学館 ¥552+税
(2015年8月28日発売)
奏初範(かなで・はつのり)。
その名前から「ショパン(初範)」と呼ばれる彼は、東京・谷中にあるアナログレコード全般を扱う「奏音楽堂」の店主だ。
そして彼は、その知識と推理力で、レコードにまつわる様々な謎を解き明かしていく――。
『真夜中のこじか』のコンビが今回世に送り出したのは、レコードをめぐる音楽ミステリーだ。
ある時はモーツァルトの幻のレコード、ある時はプレスリーの稀少盤。
扱っている題材を調べてみると、実際の逸話に基づいてのアイディアがほとんどで、そのリアルさがドラマをさらに盛り立てている。
ヒロインとなるのは小川恵。
名曲喫茶「ドビュッシー」のマスター、土橋(この名字ゆえにドビュッシー、だそうだ)からはバッハちゃんと呼ばれることも。クラシック音楽通ならご存じの通り、バッハとはドイツ語で「小川」の意味を持つからだ。
そんな小ネタも楽しいこの作品は、背景までていねいに描きこまれた誠実な絵柄で、谷中の穏やかな空気も味わえる。
アナログレコードには深みと安らぎのある音で人を引きこむ性質があるが、このマンガもよく似ているのかもしれない。
さて、物語はまだ始まったばかり。
鮮やかに謎を解いていく初範だが、どうやら彼の才能はそれだけではないらしい。
結構なワケあり感のあるエピソードがそこここに見え隠れしていて、じつに興味をそそる。
初範がこの先どんな謎解きをするのか、そして彼自身にまつわる謎の正体とは何か――楽しみに見守りたいところだ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
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