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9月29日は招き猫の日 『Let’s豪徳寺!』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/09/29


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

9月29日は招き猫の日。本日読むべきマンガは……。

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『講談社漫画文庫 Let's豪徳寺!』第1巻
庄司陽子 講談社 ¥631+税


9月29日は招き猫の日である。「来(9)る福=ふ(2)く(9)」の語呂合わせで、日本招猫倶楽部が制定した。
前脚で手招きしている姿は愛らしく、商売繁盛の縁起物として古くから親しまれている招き猫だが、いつから存在するのか厳密にはわかっていない。

由来には諸説あるが、そのうちのひとつが豪徳寺由来説だ。
豪徳寺は、小田急線豪徳寺駅の付近にある世田谷区のお寺である。寛永年間、彦根藩主・井伊直孝が鷹狩りの途中で豪徳寺の前を通りがかると、この寺の飼い猫が手招きをしていたという。
直孝は猫にいざなわれるように寺に立ち寄ると、にわかに雨が降り始めた。猫のおかげで雨に降られずにすんだ直孝は、後日、多額の寄進をし、お寺を再建したとのご由緒がある。豪徳寺は井伊氏の菩提寺となったので、桜田門外の変で暗殺された井伊直弼の墓も豪徳寺に存在する。
ちなみに、滋賀県彦根市のマスコット「ひこにゃん」は、井伊直孝を手招きした猫をモチーフとしている。

そんな豪徳寺と縁のある作品が、庄司陽子『Let's 豪徳寺!』である。
招き猫のお寺(豪徳寺)とは無関係ではあるものの、世田谷の高級住宅街にある大豪邸が作品の舞台であり、登場人物の苗字が小田急線の駅の名前から取られているので、あながち無関係とは言えない?(かなり強引か)。

主人公・狛江百合(こまえ・ゆり)が、豪徳寺家に住み込みで“お手伝いさん”として働くことになったところから物語がはじまる。
豪徳寺家は、大奥様(祖母)の香(かおり)を筆頭に女ばかりの5人家族。ばあやの北見(きたみ)、運転手の経堂(きょうどう)、保母の舞姫(まき)、そして百合の9人がさまざまな人間模様を繰り広げる。いわば「家政婦は見た」的な、外部の人間(=主人公)による「異世界見聞録(=セレブ世界のぞき見)」の体裁を取っている。

基本的にはラブロマンスありのコメディ作品だが、奔放であったり、家に縛られたり、社会進出したり……と、さまざまな女性の性や生き方が描かれていく。
作品の初出は1981(昭和56)年。日本での男女雇用機会均等法の制定は1985年だから、女性の社会進出が現在ほどは進んでいない時代のこと。掲載誌は女性誌の「BE・LOVE」(講談社)なので、社会における新しい女性像を探るというか、「翔んでる女」(1977年の流行語)を描こうという意図が見えてくる。

今とは違う価値観の社会で苦悩する女性の姿は、現在から見ればむしろ新鮮に映る側面があり、とはいえ普遍的な男女の問題を扱っている点での共感もえられる。
少しでも手招きされたような気分になったなら、この作品世界に立ち寄ってみてはどうだろう。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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