日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『椎名祐は泣いてる女にしか欲情しない』

『椎名祐は泣いてる女にしか欲情しない』第1巻
田中ててて 小学館 ￥552+税
（2015年10月7日発売）

パッと見イケメンの椎名祐（しいな・ゆう）は、涙を流す女の子の表情にゾクゾクしてしまうやっかいな性癖の持ち主。
アイドルの号泣会見映像を見て、しみじみ感じ入っちゃったりする“ホンモノ”だ。
恋人である明日香に冷たい言葉を放ち、次の瞬間を心待ちに。「やっぱり泣き顔がイチバンかわいい」と思ってしまう彼自身、自分の歪みには気づいているのだが。

一方、祐のそんな性癖を知らない明日香は、彼に嫌われないため泣かない女になろうとひそかに決意。
祐が、ずっと気になっていた高校のクラスメイト・晴田さんと再会したことも影響し、2人はだんだんとかみ合わなくなっていく。しかし、明日香は祐に強い執着を抱き続けるのだ。

祐が勤めるバーのマスターである叔父・健介もまた難儀な人物。
45歳にしてモテに不自由しない一方、だれにも本気になれず流浪の日々を送っている。

登場人物それぞれのバックグラウンドや思考が少しずつ開示されていく展開は、恋愛劇にしてミステリーの趣も。
いま一番知りたいのは……晴田さんが高校時代とは一変して、明るい笑顔を見せるようになった理由だ。

予想を裏切るほどの穏やかならぬ1巻のヒキに、先が気になってしょうがない！

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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