日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『くーねるまるた』
『くーねるまるた』第8巻
高尾じんぐ 小学館 ¥552+税
(2015年10月30日発売)
本作『くーねるまるた』は、ポルトガル人留学生・マルタの日本貧乏滞在記である。
本編はのんびりしたマルタさんの日常系料理マンガだが、最新2巻は2カ月連続リリースという駆け足なペースで刊行されたこともあり、いつのまにやら第8巻に到達した。
今回は、福引きで盛岡旅行を引き当てたマルタさんが、盛岡に向かう話がメインとなる。旅先で知りあった地元民とふれあい、さらに山菜採りにまで出かけることに。
本作では異国人マルタさんの目を通じて日本が“再発見”されていくが、マルタさんの視線が向く先は日本の日常的な光景ばかり。
お役所が海外にアピールしたがる“クールジャパン”とか、自尊心をくすぐる“日本スゴイ!”とは縁遠く、普段はあまり気にとめないような日常がクローズアップされる。
旅行というかたちでその視野を拡張しつつも、あいかわらずの着眼点に安心させられるはずだ。
それは「盛岡観光」というよりは、盛岡の人々の暮らしをのぞき見るような感覚である。
もちろん、日本のありふれた食材を代用したポルトガル料理は今巻でも健在。
ガスパショ素麺などは、次の夏にはぜひ試してみたいメニューだ。
ちなみに、著者の高尾じんぐによる盛岡取材紀行(エッセイマンガ)は、岩手県が提供する無料マンガサイト「コミックいわて」で読むことができる。
こちらもあわせて読んでみよう。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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