日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『T-DRAGON』

『T-DRAGON』第1巻
桜谷シュウ 小学館クリエイティブ ¥570+税
(2015年11月5日発売)
剣道部でインターハイ出場を目ざしていた高校3年生・中丸光太郎は、自分の住む街から爆発的に蔓延した謎の伝染病のため、志なかばで夢を閉ざされてしまう。
全国で1500万人が感染し、1000万人以上の死者を出した奇病は、隕石に付着していた地球外生命体(エイリアン)に由来するもの。ウイルスの保因生物(キャリア)は伝説の生物・ドラゴンに似る形状から「T-DRAGON(ティードラゴン)」と名付けられ、その捕獲が急務となっていた。
しかしながらT-DRAGONは、普通の人間には発見・捕獲を不可能たらしめる“ある特徴”を持っていた……。
体長わずか5ミリの生物が人類滅亡の脅威となった世界。主人公が全長およそ18ミリの戦士となってワクチン製造に必要なキャリアの捕獲作戦に参加する、という設定は、リチャード・フライシャー監督の古典的SF映画『ミクロの決死圏』(1966年)を想起させる。
また、先ほど発表された当サイトの12月の「このマンガがすごい!」ランキングオトコ編第8位の『ワンダーランド』は、同じく登場人物が縮小されてしまう物語だが、そこに至るまでの主人公の意志に明らかな差があって、こちらの光太郎は病魔に侵された弟・ユウを救うため積極的にC・C・P(キャリア捕獲プロジェクト)に参加する。
そんな緊迫のなか、捕獲メンバーに想いを寄せる少女・綾乃ミハルを見つけ、彼女も守ろうと戦いに身を投じる。
本作は夢を失った少年が再び立ち上がる成長ストーリーの要素も含有しているのだ。
一度は夢を絶たれて絶望に打ちひしがれていた光太郎は、わずかな希望に賭けて戦う道を選ぶ。
ともに戦う仲間は総勢1125人。縮小化によって生じた驚異的な身体能力と最新武装で臨むミクロの戦いは、予想を超えたエイリアンの猛攻で幕を開けた。
群れをなして兵士を次々と捕食するカナブン、さらには鋭利な刃物を持つ巨大な影。立ちはだかる姿はまさにドラゴンそのもの。
まさかこいつが……というところで続巻へ、というヒキはお見事というほかない。
100分の1の戦場。行く手に待つものは希望か? それとも絶望か?
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。「『仮面ライダードライブ』フォトブック~Drivin’Album」や『別冊宝島2394 仮面ライダー』もやってます。