日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『レインマン』
『レインマン』第1巻
星野之宣 小学館 ¥1,389+税
(2015年10月30日発売)
『ヤマタイカ』や『宗像教授シリーズ』、そして『星を継ぐもの』のコミカライズといった、スケールの大きなSFや伝奇作品で知られる星野之宣。
そんな著者が新作『レインマン』で挑むのは、やや意外なことに「オカルト」の世界──。だがもちろん、星野之宣が描くからには、ありきたりなオカルトマンガであるワケがない。
主人公の雨宮瀑(タキ)は、母の死後、とある事情から「賽木超心理学研究所」なる機関のスタッフとなる。
超常現象に興味のない瀑はすぐにその職をやめるつもりでいたが、ある日、自分とそっくりの男に遭遇。そして、双子の漣(レン)を名乗るその男は、目前で投身自殺をとげてしまう。
しかし、本当に不可解なのはここから先。
検死の結果、漣には「脳」が存在せず、瀑も同じく脳のかわりに脳脊髄液(つまり水)だけが頭蓋骨を満たしていることが判明する。
脳がないとすれば、いったい自分の意識はどこから来るのか──そんな不可解な現象に輪をかけるように、死んだはずの漣があらゆる場所に現れ、知覚を共有することに……と、主人公の来歴からしてただごとではない物語であることはおわかりいただけるだろうか。
しかし、これが主人公自身の謎に迫っていくだけの「閉じた物語」ではなく、ある意味、あらゆる場所に偏在する意識を“相棒”のようにして、超常現象のからんだ事件の謎に斬りこんでいくという構造が非常に興味深い。
また、たとえば「体外離脱」を、最近の自動車に搭載されている「アラウンドビューモニター」にたとえるなど、端々にSF的な視点が垣間見えるのはさすが星野之宣といったところ。なので、「オカルトはちょっと苦手だなー」という人も、敬遠することなく読んでいただきたい。
まだまだ謎だらけではあるが、オカルト、サスペンス、そしてSFと、様々なジャンルを横断する未知の物語。
今後の展開にも注目していきたい。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。