365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月2日はラオスの建国記念日。本日読むべきマンガは……。
『ジャポニカの歩き方』第1巻
西山優里子 講談社 ¥562+税
12月2日はラオスの建国記念日。1975年のこの日、ラオス人民民主共和国が樹立された。
ちょうどそのころ、ラオスに住んでいたのが、『Harlem Beat』などで知られる西山優里子だ。
当時8歳だった“ゆりちゃん”は、隣国ベトナムと同じく共産主義の戦いを続けていたラオスの首都・ヴィエンチャンに住んでいた。
だが、ベトナムのサイゴンが陥落したことを受けてラオスの連合政府が王政の廃止を宣言、ラオス人民民主共和国が誕生するに至った。西山一家はその年の夏に、追われるように日本へ帰国する。
それから35年の月日が流れた2010年、「イブニング」編集部から西山に「大使館の話はどうでしょう」と企画を依頼する形で始まったのが『ジャポニカの歩き方』だ。
物語は主人公の青海空土(あおみ・からど)が、大学生活最後の夏休みに友人たちと東南アジアを旅するシーンから始まる。楽しいはずの旅行が一転、タイの料理屋で暴力的なボッタクリに遭遇。
間一髪のところで在外公館派遣員の女性に助けてもらうも、あまりの恐怖に空土は「もう二度と海外には出ない」と心に決める。
ところが予定より1日遅れで帰国したせいで、来年入るはずだった会社の内定者説明会を無断欠席したことが発覚、あえなく内定取り消しに。
その後、就活を再開するも、なかなかうまくいかない空土は、バイト先で知り合った外交官の横溝から、在外公館派遣員の職を紹介される。海外はこりごりな空土だったが、横溝は「とある発展途上国の在外公館派遣員を3年勤めあげたら区役所の就職を世話してもいい」という条件を出す。
その国の名はラオ王国。ベトナムとタイの間にある小国だ――。
ラオ王国はラオスをモデルにした架空の国。ずっと鎖国状態だったが、2000年代後半から開国が進み、各国と国交を次々に樹立しているまっ最中。
空土はそんな過渡期の国に、右も左もわからぬ状態で飛びこむことに……。小心者でお人好し、英語すらおぼつかない空土が、コンビニ1軒ないアジアの小国で荒波にもまれながら成長していく様にワクワクする。
一方、現地の人々と触れあいの多い在外公館派遣員という職業をとおして、普通に生活しているだけでは見えにくい日本の立ち位置も浮きぼりになる。
自己主張をせず、どんなときでもあいまいな態度をとる典型的日本人の空土は、さまざまな失敗を繰りかえすが、そのたびに少しずつたくましくなっていく。
ラオスというなじみのない小国の素顔を伝えるとともに、海外で働くことの楽しさや厳しさを知るきっかけにもなる良書だ。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガ、映画、バクチの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。