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『中間管理録トネガワ』第1巻 福本伸行(協) 萩原天晴(作) 橋本智広、三好智樹(画) 【日刊マンガガイド】

2016/01/10


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『中間管理録トネガワ』


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『中間管理録トネガワ』第1巻
福本伸行(協) 萩原天晴(作) 橋本智広、三好智樹(画) 講談社 ¥565+税
(2015年12月4日発売)


『賭博黙示録カイジ』にて圧倒的な存在感を示した帝愛グループの幹部、利根川幸雄。
「勝ちもせず生きようとすることがそもそも論外なのだ」と断言するその姿は、借金まみれのカイジの目には勝ち組そのものだったわけですが、そのじつ、ワンマン会長・兵藤和尊の無茶ぶりに翻弄される、中間管理職でしかなかった!
なんて現実っ……!! 圧倒的板挟みっ……!!

そんなわけで本作は、そんな利根川を主人公にしたスピンオフコメディ。
シリーズの始まりとなったあの「限定ジャンケン」の誕生秘話が描かれる。

しょっぱなから部下の黒服の見分けがつかない、名前がおぼえられないっ……なんてしょうもないことで悩んで(しかも『カイジ』ならではの例のセリフまわしでっ……)1話終わる、とか本当に愉快なマンガですが、セリフ以外も『カイジ』…!
ちゃんと『カイジ』……!!

なぜならばっ…! 中間管理職とはいわば、上司へのおぼえと部下からの信頼、実利とプライドという2つのジレンマの間で戦う、ひとりのゲームプレイヤーっ……!
管理職とは名ばかり…! 打算に満ちた部下と言う名の打算に満ちた相手との、欺き欺かれ、蹴落とし蹴落とされる、油断ならない心理戦っ……!
ゲームが社会の縮図なら、社会もまたゲームの縮図っ……!!

つまり本作が描くのは出世レースという名のサバイバルゲームっ……!!
そして読者は見るっ…! あまりに苛烈な、利根川の選択をっ……!!

ちなみに描き手は原作の福本伸行ではなく、原作:萩原天晴、漫画:橋本智広、三好智樹とクレジットされていますが、セリフまわしといい絵柄といい、圧倒的再現度っ……!
無理…! 巻末に収録されている福本伸行描きおろしマンガと比べても、見わけるの、無理っ……!! なので、そこも見どころです。



<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas

単行本情報

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