『先生のおとりよせ』
中村明日美子×榎田ユウリ リブレ出版 \853
(2014年6月10日発売)
少女マンガ・BL・サスペンス……と、幅広いジャンルで活躍する漫画家・中村明日美子と、BLのみならずライトノベルなどのジャンルでも人気の小説家・榎田ユウリ(BL小説執筆の際の筆名は榎田尤利)の、息の合ったタッグ作。
一見クールなメガネ男子の小説家と、フェミニン男子な漫画家が、合作してマンガを執筆することに。どうにも気が合わない2人だが、共通点は互いの作品のファンであること、そして「おとりよせ」の趣味だった!
そんなにわかバディの、いがみあいつつ距離が変化していく様子を、マンガと小説のリレー形式で綴っていく。
本作は、最初にキャラクターなどの基本設定を決め、後はお互い自由に描(書)かれたという。
榎田による小説部分は、フォントを自在に変化させたりと、ポップでコミカルな雰囲気。でもときに涙腺まで刺激されてしまう緩急はさすが。また、コメディ仕様にチューニングされつつも、中村が得意とする官能的な描線による人物の色っぽさも健在。
おいしそうな「おとりよせ」とからんだエピソードの数々に、たっぷりと満足感を味わえてしまう。
じつはこの作品、BL描写はありません(榎田のペンネームも、カタカナ名義)。
BLはちょっと……と二の足を踏んでいた方や、おいしいものが好きな女子・男子にも、「ためしてみませんか?」と耳打ちでオススメしたい。
<文・川原和子>
マンガエッセイスト。幼稚園教諭、アニメ制作会社等を経て独立。著書に『人生の大切なことはおおむね、マンガがおしえてくれた』(NTT出版)。NTT出版Webで新連載準備中。NTT出版Web内での連載はおすすめマンガ時評「此れ読まずにナニを読む?」。
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