日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『ずっと独身でいるつもり？』

『ずっと独身でいるつもり？』
おかざき真里（画） 雨宮まみ（案） 祥伝社 ￥900+税
（2015年12月8日発売）

『ずっと独身でいるつもり？』に登場するのは、36歳の女性。都内でひとり暮らしをしながら、出版関係の仕事などをしている。
もし、そういう女性と飲み屋で隣の席に座ったら、「独身ですか？」とは、気になりつつも、聞けないだろうな。

とかなんとか言う筆者だって、アラサーなわけで、都内にひとり暮らしで、仕事は出版関係。
独身かどうか、全然聞いてもらってかまわないとは思っているが、ただ、「独身です」と言うと、相手に気をつかわせちゃう（こともある）。「そんな顔するなら聞くなよ」とも言えず、「いやー、大将みたいな人がいたらすぐ結婚するんですけどねー」とか、当たりさわりないこと言わざるをえなくなる。自分で言っておきながら、なんだかとても、いたたまれない。

「ずっと独身でいるつもり？」というプレッシャーは、わりとじわじわ効いてくる。
自分で稼いだお金で、自分の衣食住を自分で世話する。そこには自立の喜びがある。
でも、独身か、そうでないかというものさしでは、自立の喜びは測れない。毎日毎日、会社に行って仕事に没頭する時間や、稼いだお金で好きなことをする時間は、私が独身だからという理由で、意味のないものになってしまう……？

しかし、人生。結婚すればすべてバラ色、なんてこともなさそうだ。だいたい、既婚者の友だちだって、法事が家のローンでお受験をお姑さんだとか、話聞くだけで目まいするほどたいへんそう。

じゃあ、どうすりゃいいのよ！　とか考えたことある人に、力強く優しい道しるべを示してくれる『ずっと独身でいるつもり？』。
「お仕事賛歌」ではない。生きる力を肚にこめてくれる、こぶしの効いた演歌みたいなド直球の物語。『ずっと独身でいるつもり？』は、そんなマンガだ。

＜文・片山幸子＞
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。