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『長閑の庭』第3巻 アキヤマ香 【日刊マンガガイド】

2016/01/16


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『長閑の庭』


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『長閑(のどか)の庭』第3巻
アキヤマ香 講談社 ¥429+税
(2015年12月11日発売)


好きだと自覚したら、恋なのか。
恋は自覚する暇さえなく落ちてしまうものなのか。……とか。

まどろっこしいこと考えさせられる『長閑の庭』。
地味でおくてな大学院生の元子・23歳と、厳格な榊教授・64歳も、ようやくじれったい一歩を歩み出す。

教授が元子に出した“好意”と“その分類”についての課題。
なんじゃそりゃあ! 自分の気持ちでしょうが! と声に出して言いたくなる絶妙なタイミングで、元子と教授以外のだれかしらがバシッと言ってくれます。
タイミングといい、言葉といい、セリフのはまり方がすごいのだ。

ためらう2人の距離が、絶妙なセリフによって、気づけば近づいたり離れたり。
読んでいる側も、気づけば感情が雪崩のように崩れていく……。
ドキッとさせられたかと思えば、グサリときたり、ハッとしたり……。その一つひとつが「知らぬ間に!」って感じで超不思議。
後味残らないさくっとした感情が生まれては消えていくのだ。

1冊読み終えたときには、すっかり『長閑の庭』ワールドに夢中。
「自分の気持ちが恋なのか」考える主人公が、1枚1枚、感情の皮を自力ではいでいく様子を見ると、自分の心までもまる裸にされるようで、居心地が悪い。
だけど、この居心地の悪さがあるから、ページをめくる手を止められなくなる。登場人物と、何よりも私自身の「心のありか」をつきとめないことには、どうにもこうにもすっきりしないんだもの。

自覚する暇さえ与えられず、気づけばひきつけられてしまう。この心の動きは、まさに恋?
『長閑の庭』の引力が強すぎて、困る。



<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。

単行本情報

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