『恋は雨上がりのように』第1巻
眉月じゅん 小学館 \552+税
(2015年1月9日発売)
無口で美人な女子高生が、バイト先であるファミレスの店長に恋をした。
店長はバツイチ子持ちの、頼れるオジサマというポジションからはほど遠い、さえない「オジサン」である。
内向的なところもあるけど、若くてスタイルがよくて眼も大きくて、髪の毛がサラサラで脚も長い(走ると速いけれど、陸上部で負った怪我の後遺症がある)……などなど、オジサン側からの理想を具現化したかのような主人公の少女が、ダメな姿を晒している店長に恋をする様子は、普通に考えたら痛ましい。やめておきなさい、と言ってあげたい。
一般的にいって、美少女がダメな成人男性に憧れる様子を描くのは「危うさ」をはらむ。
先述のとおり、理想を描いただけのご都合主義になってしまうからだ。読者にとってリアリティがない(事例としてはなくもないと思うが……)。
ある意味で、オジサンが美少女に一方的に好意を寄せる構図のほうが、まだ正直なぶんだけ、いくぶんマシかもしれない。
その点、本作はその「危うさ」を少女の無口さと、店長の油脂感の少ないダメっぽさによってかなり希薄化している。
希薄ながら漂う「これでいいんだろうか?」という危うい雰囲気と、それを覆い隠してあまりある2人の「ガツガツしていない感じ」が本作の魅力である。
タイトルにある「雨上がり」の雲間から光が差し込むような「爽やかさ」が本作の全体を満たしている。