本作を読むときに、「雨」を始めとした天候や空気感がどのように描写されているのかに注目するのは、おそらく正しい態度だろう。
何しろ最初のコマからして「降水確率は10% 雨の心配はありません」と書き込まれている。
でもその予報は大ハズレで、雨は降り出してしまう。第1話の末尾のあたりになるとまた雨は止み、ふたたび雨が降りだすのは1巻のクライマックスが起動する第7話。
雨のほかにも雲や陽射しなど「天候」や「空気感」が、無口な少女のかわりに、まるで気持ちを訴えかけてくるかのようだ。
さて第1巻の前半では、(睨まれている!と恐れられながらも)店長を見つめるしかできなかった少女は、同巻の後半になって、とうとう店長に恋心を告白してしまう。
しかし、バツイチ子持ちのダメ店長はおそらくその気持ちを素直に受け止めたりはできないだろう。
次巻以降、店長がどう少女の気持ちをはぐらかすのか、少女が店長のその「はぐらかし」をどう突破しようとするのか。
店長の焦る姿をかわいらしいと思って眺めるもよし、少女の想いを応援する気持ちで読んでもよし、頼りない人の様子をハラハラと眺めるもよし、様々な楽しみ方ができる良作だ。
『恋は雨上がりのように』著者の眉月じゅん先生から、コメントをいただきました!
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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