365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
1月18日は東証の全銘柄が取引停止になった日。本日読むべきマンガは……。
『拝金』第1巻
堀江貴文(作) 竹谷州史(画) 徳間書店 ¥590+税
さかのぼること10年前。2006年のきょう、東証の全銘柄が取引停止となる異常事態が発生した。
これは、ホリエモンこと堀江貴文が社長を務めていたライブドアが、証券取引法違反で強制捜査を受けたことを引き金として前日から始まった株価暴落の余波。
主に個人を中心とした投資家たちから売り注文が殺到し、東証の売買システムで処理可能件数に達する可能性が出てきたための緊急措置である。
その結果、株価暴落はライブドアだけにとどまらず、マーケット全体に大打撃を与えることになった。
この一連の出来事が、いわゆる「ライブドアショック」と呼ばれるものだ。
ライブドアショックが起こるまでの数年間、ホリエモン率いるライブドアは世間を揺るがし続けた。
ネットビジネスを中心にM&Aを繰り返して快進撃を続けていたライブドアが、オリックス・ブルーウェーブとの吸収合併が決定した近鉄バファローズの買収に名乗りをあげたのが2004年。球界の救世主としてホリエモンが連日メディアに登場、一躍時代の寵児となる。
さらに翌2005年にはニッポン放送株を35パーセント所得。ホリエモンはニッポン放送が筆頭株主を務めるフジテレビジョンをライブドアの傘下に入れようと画策したのだ。
新進のネット起業が民放を買収するかもしれない……。前代未聞の事態に、世間は大騒ぎとなった。
いったい、どうやってホリエモンとライブドアはのし上がっていったのか? いまだにピンと来ていない方も多いのではないだろうか?
その答えはホリエモン自身のペンによる2010年の小説『拝金』にすべて書かれている。
てなわけで、本日紹介するのは竹谷州史の作画によるマンガ版『拝金』だ。
物語は場末のゲーセンに入りびたっているフリーターの若者・藤田優作が、謎の“オッサン”と出会うところから始まる。
羽振りのいいオッサンに「金持ちになりたくないか?」と問われた優作は、押し殺していた欲望に火がつき、生活を一変させる。
フィクションの体をとっているが、以降は優作というフィルターを通して、ホリエモンが起業後にかけぬけていった濃厚な日々が描かれる。
同世代の仲間たちと小さな会社を立ち上げ、上場して資金を獲得し、倒産寸前の企業を吸収。
企業名を変更して証券部門を設立、株式分割を繰り返して株価を高騰させ、プロ野球球団の買収騒動~テレビ局買収騒動、その先に待ち受ける落とし穴……。
こんな怒涛の日々が、スピーディに展開するのだから、おもしろくないはずがない。
ベンチャーとは? マーケットとは? メディアとは? 金を持つこととは?
さまざまな疑問に刺激的な回答を突きつける本作は、極上のエンタメであり、経済の教科書だ。
ホリエモンが好きな人も嫌いな人も必読ですよ!
<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(2月13日公開)のパンフレットに参加しております。