日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『あしたは土曜日 春・夏』
『あしたは土曜日 春・夏』
山本崇一朗 小学館 ¥552+税
(2015年12月11日発売)
毎週金曜日発売の「読売中高生新聞」連載、というちょっと変わった作品。メイン読者はもちろん、中高生。
元気が暴走しがちでハイテンションな、太眉がチャームポイントのミナ。
まじめで勉強ができ、世話焼きなメガネの委員長、ユカリ。
マイペースで何を考えているかわからないジト目のサナエ。
中学1年生の日常は、当たり前のことしか起きていない。
なのに、大人の視点であらためて見ると、子どもの頃の感覚を忘れていたことに気づかされる。
ミナはコーヒーが飲めない。なのに背伸びして、なんとか甘い缶コーヒーを飲もうとするも、やっぱり「苦い」。
ミナは炭酸飲料が飲めない。味は好きだからとラムネを買うも、「からい」。
彼女が子ども、というよりは、感覚が鋭敏なのだ。思春期前後の体の発達で、大人になるほど徐々に体が慣れていく、悪く言えば鈍感になる。
ミナは舌だけでなく、「おもしろそうなこと」すべてに敏感。だから興味があっちこっちにいく。
ユカリとサナエは比較的落ち着いているものの、やっぱり敏感。
ネコを見かける、けん玉をする、髪の毛をしばる、冬服から夏服に変える。ささいなことでも、人生の大事のように興味を示す。
だからこそ、彼女たちは大人が見落としがちなことを発見する。
ミナがダイエットをすると言い出した時の話。
「世の中の男はちょっと太ってるくらいが好きらしいからいいのよ。」
「じゃあなんでテレビに出てる人ってやせてる人が多いのー?」
「……それがテレビなのよ……」
鋭い。
登場キャラたちは、グラマラスではない。スカートはひざ上丈。制服上着はちょっと大きめ。
恋愛話より食べものや動物の話のほうが好き。別にまじめではなく、宿題はさぼりたがる。
純粋とか素朴という言葉でくくりきれない、普遍的な中学1年生像。世代を超えて共感できる部分が多いはずだ。
この3人は、同じ著者の『からかい上手の高木さん』にも登場している。
それぞれまったく別の話なので、どちらから読んでもOK。できれば『からかい上手~』を読んでからこちらを読むと、彼女らの住んでいる田舎町の様子や、教室の雰囲気がつかみやすいはず。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」