365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月4日はザ・ビートルズの日。本日読むべきマンガは……。
『僕はビートルズ』第1巻
藤井哲夫(作) かわぐちかいじ(画) 講談社 ¥533+税
ビートルズにはファンがつけた「ファブ・フォー」という愛称があったのをご存じだろうか?
fabulous four(すばらしい4人組)を略してFab.4=ファブ・フォー。このファブ・フォーに引っ掛けて、2月4日はザ・ビートルズの日に制定されている。厳密に言えば、2月4日(February.4)は、Fab.4ではなくてFeb.4ですけどね。
てなわけで本日紹介するマンガはズバリ“ファブ・フォー”という名のバンドが主役の『僕はビートルズ』だ。
物語は2010年の日本から始まる。
ハタチそこそこのメンバーで構成されたビートルズのコピーバンド“ファブ・フォー”は、六本木のライブハウス「リボルバー」で熱演を繰り広げていた。
ポール・パートのマコトは、ビートルズのコピーバンドがリヴァプールに集結する「ビートルズ・コンペンション」に出場して世界一になり、2代目ビートルズとしてオリジナル曲を生み出すという野望を抱いていたが、ジョン・パートのレイに「くだらない」と一蹴されてしまう。
そんなこんなでギクシャクし始めた“ファブ・フォー”の4人が、ひょんなことから1961年の吉祥寺にタイムスリップしちゃったものだから、さぁたいへん!
流しのオッサンに拾われたマコトとショウ(ジョージ・パート)は、スナックであの名曲「イエスタデイ」を披露。オッサンから「誰の曲だ?」と問われたマコトは、厚顔無恥にも「俺が書いた曲です」と言い放つ。
ここからが仰天の展開。「まだビートルズがデビューするのは翌年の秋。だったらその前に自分たちがビートルズになってしまえ!」とばかりに、マコトの暴走が始まるのだ。
さっそく自主制作でレコードを作り、ラジオで流したことで、その斬新なサウンドが日本の音楽シーンに激震をもたらす。
やがてその衝撃は海を越え、リヴァプールの4人(ビートルズ)にも届くことに。
自分たちが未来に書くはずだった楽曲を耳にしたビートルズは、いったいどうなってしまうのか?
「モーニング」で連載がスタートした当初は、「ビートルズを冒涜している!」と憤るビートルマニアも少なからずいた。それは“ファブ・フォー”のレイだって同じ気持ちだ。
ではマコトがなぜこんなマネをしたかといえば、「自分たちが先に『抱きしめたい』や『プリーズ・プリーズ・ミー』を発表してしまうことで、本家がそれ以上の(聴いたことのない)名曲を書いてくれるのではないか? だとしたら、ぜひとも聴いてみたい」というねじれたファン心理があったから。
はたして、はるか遠いアジアの国から突如“ファブ・フォー”という異分子が現れたことで、ビートルズはどんな行動をとるのだろうか?
マコトたちはどこまでウソを突きとおすのか? そして音楽史を根底から覆そうとする未来人たちに待ち受けるペナルティは?
音楽ファンならページを繰る手を止められないはず。
全10巻、イッキ読み推奨だ。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(2月13日公開)のパンフレットに参加しております。