365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月12日はダーウィンの日。本日読むべきマンガは……。
『OL進化論』第1巻
秋月りす 講談社 ¥515+税
1809年2月12日、進化論でおなじみチャールズ・ロバート・ダーウィンがイングランドで生まれた。てなわけで、本日はダーウィンの日に制定されている。
そもそもダーウィンの進化論の何がすごかったのか?
勘違いされている方も多いと思うが、じつは進化論という考え方自体はダーウィン以前からすでに存在していた。ダーウィンはガラパゴス諸島などへのフィールドワークを経て、「生物の進化は突然変異と自然淘汰によって起こる」と結論づけた点が新しかったのだ。
これは自然選択説と呼ばれるもので「環境によりよく適応したモノが子孫を残し、その変異を伝えていく確率が高くなる」という考え方である。
てなわけで「進化論=ダーウィン」という形で言葉がひとり歩きしているきらいもあるが、マンガのタイトルにも進化論を冠したものは多数存在する。
代表的な作品は、なんといっても『OL進化論』だろう。
「モーニング」にて1989年より四半世紀以上にわたって連載中の長寿4コマだ。共感と笑いを呼ぶ“OLあるある”を中心に、上司や家族のなにげないひとコマを紹介する形式は、連載27年目に突入してもブレていない。
スタート当初はバブルの絶頂期。90年刊行の第1巻を読み直すと、若いOLたちは驚くほどイケイケだ。
ブランドものに身を包み、2000円のランチを楽しみ、タバコも酒もたしなみ、ジュリアナ風のディスコでエンジョイ。でもって、さんざん若さを堪能した後は、20代のうちに結婚するのが当たり前……という空気が伝わってくる。
筆者が、この第1巻をバブル当時は小学生だった嫁に読ませて感想を聞いてみたところ、「生活に余裕を感じる」との答えが返ってきた。
著者の秋月りすは本作の連載開始時点で31歳。少し年上のお姉さん目線で90年前後に出現した新たなOL像を描いたのだろう。
しかしながら、毒っ気が強かったのは90年代前半まで。バブル崩壊後に日本経済が冷えこみ始めると雰囲気はガラリと変わってくる。
独身の悲哀を描いた作中の人気シリーズは晩婚化にあわせて29歳から「35歳で独身で」にシフト。海外旅行や嗜好品に散財しまくっていたOLたちは、節約大好きの地味派に変わっていった。
サザエさん方式で主要キャラのジュンちゃんも美奈子もいっさい年をとらないが、じつは時代時代に適応した設定に変異しているのだ。
普遍的なOL像を描きつつ、時代を投影する鏡としての役割も担っている稀有な作品だけに、これからも長く続けてほしいとせつに願う。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(2月13日公開)のパンフレットに参加しております。