日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『乱歩奇譚 Game of Laplace』

『乱歩奇譚 Game of Laplace』夢
江戸川乱歩（案） 乱歩奇譚倶楽部（作） 上江州誠（監）
黒山メッキ（画）光文社 ￥800+税
（2016年1月19日発売）

昨年（2015年）にノイタミナ枠で放送されて話題となったアニメ『乱歩奇譚　Game of Laplace』を『戦場のヴァルキュリア2 -our only days-』、『かみさまサクリファイス』の黒山メッキがコミカライズしたのが本作である。

アニメ『乱歩奇譚　Game of Laplace』は、江戸川乱歩の作品を原案に、近未来の日本を舞台にしたオリジナルストーリーである。
名探偵・明智小五郎、その助手の小林少年といった乱歩作品の登場人物は、宮内庁公認・特定未成年少年探偵アケチ（17歳）とコバヤシ少年（13歳）と微妙にずらした設定になっている。
そして、アケチたちのほかにもナカムラ警部、影男、黒蜥蜴といった乱歩作品のキャラクターが続々と登場する。

黒山メッキのコミカライズは、アニメの物語をなぞっており、本作にはアニメの第1話から第5話にあたる「人間椅子（前・後編）」「影男」「怪人二十面相」「芋虫」が収録されている。
また、黒山の作画が、アニメの絵を忠実に再現したものなので、アニメの視聴者としては違和感なくマンガに入っていくことができる。こうした点は高く評価したい。

ちなみに、本作の初版にはアケチ、コバヤシらの「緊縛カード」が付録でついている。
やはり乱歩といえば、美少年（青年）の緊縛というイメージになってしまうのだろうか……。乱歩ファンとしては「乱歩って、それだけじゃないぞ！」と複雑な心境ではある。

本作は第1巻で、第2巻にあたる『乱歩奇譚 Game of Laplace 幻』は本年春発売予定。
そちらにはコミカライズのオリジナルストーリーも収録されるようなので楽しみだ。

＜文・廣澤吉泰＞
ミステリマンガ研究家。「名探偵コナンMOOK 探偵女子」（小学館）にコラムを執筆。現在発売中の「2016本格ミステリ・ベスト10」（原書房）にてミステリコミックの年間総括記事等を担当。また、「ミステリマガジン」（早川書房）でミステリコミックレビューを担当。