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現世は夢、夜の夢こそ真実……没後50年の「江戸川乱歩マンガ」ベスト3 ミステリ漫画研究家・廣澤吉泰さん【目ききに聞く】

2015/10/08


特定ジャンルに詳しい「目きき」の人たちに、テーマ・著者・出版社……といったカテゴリ別に、必読のマンガ作品を教えてもらうコーナー、その名もズバリ「目ききに聞く」!

今年没後50年を迎える作家・江戸川乱歩。学校の図書室にあった、明智小五郎や怪人二十面相、そして少年探偵団が活躍する児童向けシリーズを、夢中になって読んだ方も多いのでは?
最近では、大胆な脚色のアニメ『乱歩奇譚 Game of Laplace』も話題になりましたが、マンガの世界でも、乱歩作品を原作としたものや、あるいは乱歩そのものがキャラクターとして登場するものなどが多々あります。

今回は、「ミステリマガジン」(早川書房)などで活躍中のミステリ漫画研究家・廣澤吉泰さんに紹介していただきました。

廣澤吉泰さんイチオシの3作品

『江戸川乱歩異人館』山口譲司

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『江戸川乱歩異人館』第12巻
山口譲司 集英社 ¥562+税
(2015年8月19日発売)

『江戸川乱歩異人館』は、山口譲司が手掛ける江戸川乱歩作品のコミカライズ集である。

『異人館』の特徴は、江戸川乱歩その人が作中に登場している点が挙げられる。
各エピソードは、作中人物の乱歩が見聞・体験した「実話」という設定。こうした構成をとることで『異人館』は、江戸川乱歩の作品を幅広く取り上げられるようになっているのだ。
第12巻では、作中人物である江戸川乱歩の意外な過去が明かされるエピソードもある。

このたび全13巻で完結したので、この機会に手にとっていただきたい。


『江戸川乱歩妖美劇画館』江戸川乱歩(作)石川球太/真崎守/池上遼一(画)

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『江戸川乱歩妖美劇画館』第2巻
江戸川乱歩(作) 石川球太/真崎守/池上遼一(画) 少年画報社 ¥800+税
(2015年7月24日発売)

『江戸川乱歩妖美劇画館』も同様に江戸川乱歩作品のコミカライズ集。横山光輝、上村一夫、桑田次郎といった複数の漫画家が手掛けたものが収録されている。

全3巻のうち、2巻目をピックアップしたのは、石川球太「白昼夢」「人間椅子」「お勢地獄」「芋虫」「押絵と旅する男」、真崎守「巡礼萬華鏡」(「鏡地獄」より)、といっためずらしい作品が収録されているからだが、他の2冊も十分に楽しめるものだ。

なお、こうした乱歩原作のコミカライズ作品集の再刊の動きとしては、実業之日本社が『江戸川乱歩怪奇漫画館 屋根裏の散歩者・陰獣他』『江戸川乱歩猟奇劇画館 地獄の道化師・黄金仮面』を出版しているので、あわせて紹介しておく。


『文豪ストレイドッグス』朝霧カフカ(作)春河35(画)

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『文豪ストレイドッグス』第8巻
朝霧カフカ(作) 春河35(画) KADOKAWA ¥580+税
(2015年9月4日発売)

『文豪ストレイドッグス』は、中島敦、太宰治、芥川龍之介、中原中也、スコット・フィッツジェラルドといった文豪と同じ名前を持つ能力者たちが相戦うバトルアクション物であるが、このなかに「江戸川乱歩」もいる。

各登場人物の能力は文豪の作品にちなんだもので、たとえば中島敦の「月下獣」という虎に変身する力は短編『山月記』にちなんだものだ。
江戸川乱歩は「超推理」なる力を持つ。これは本人は異能力だと誤解しているのだが、抜群に推理力が優れているだけで、じつは彼は普通人なのだ。
現状、「じつは普通人」という立場ゆえに、能力者同士の死闘が前面に押し出された最近の巻では目立たなかったのだが、最新8巻では、その頭脳を発揮してエドガー・アラン・ポーとの推理合戦で活躍した。


ご協力者:廣澤吉泰

ミステリ漫画研究家。

「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。4月刊行の「名探偵コナンMOOK 探偵少女」(小学館)にコラムを執筆。

単行本情報

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