北海道南部・渡島総合振興局の、函館市に次いで人口が多い北斗市には、ちょっと不思議なお店がある。
そのお店とは、「本を読まない人のための本屋『wonderfulworld!』」のことだ。客層は、学生さんから年輩の方までと幅広いけれど、彼らには「人とは少し違うモノ」を求めて、この書店に足を運んでいるという共通点がある。
今回は、店主の上村佳樹さんに、そんなお客様が求めるマンガのなかでも、ちょっと変わった作品――読んでいくうちに自分のアイデンティティが崩れてしまいそうな、ある種の“狂気”を感じさせるマンガをピックアップしていただいた。
「wonderfulworld!」がオススメするベスト3!
『アル中ワンダーランド』 まんしゅうきつこ
『アル中ワンダーランド』
まんしゅうきつこ 扶桑社 \1,100+税
(2015年4月9日発売)
壮絶なアルコール中毒生活を描いた、ブログの裏話的エッセイマンガです。
作者は、ちょっとイカれていて、かなり笑えるブログマンガ「オリモノわんだーらんど」のまんしゅうきつこさん。
一部のキワモノたちから熱狂的に支持され、ブログの開設当初のもくろみどおり、マンガ・イラストの仕事が殺到しました。
ところが一気に注目が集まったことで精神がブレイク! 始まった連載マンガへのプレッシャー、人づきあいの増加、多忙による汚部屋化……急変する生活にココロが追いつかず、お酒に逃亡したのが運のつき。
いつの間にやら24時間お酒なしでは生きていけない体に!
幻覚や被害妄想に記憶障害といったアル中時の奇行の数々が笑えます。……いや! ここまで狂ってると笑えないよ!!
6月の「このマンガがすごい!」オンナ編第4位にランクインしています!
『江戸川乱歩怪奇漫画館』 江戸川乱歩(作) 古賀新一(画)
『江戸川乱歩怪奇漫画館』
江戸川乱歩(作) 古賀新一(画) 実業之日本社 \1,000+税
(2015年1月24日発売)
子どもの頃、僕らをさんざんビビらせてくれた江戸川乱歩。
没後50年となる今年、古賀新一による江戸川作品の短編マンガが、1冊の単行本にまとめられました。
出典はどうやら1970年代のようですが、古めかしい昔の恐怖マンガ調のタッチが、いい感じにおどろおどろしさを倍増させてくれます。
テーマは「SM」「覗き」「不倫」「偏愛」など。
「この世で本当に恐ろしいものは、オマエの心の奥底なんだよ!」といわんばかりの内容で、自分の変態性の扉をこじ開けられそうな狂気の物語集です!!
『刻刻』 堀尾省太
『刻刻』第8巻
堀尾省太 講談社 \750+税
(2014年10月23日発売)
「《止界》という時が止まった世界を舞台に繰り広げられる異能力バトル」っていうと、安っぽく聞こえてしまうのが残念!
「閉ざされた空間」というありえない極限状態。そのなかで繰り広げられる、手に汗を握る心理戦。
ひとりよがりの者、仲間を助けようとする者、狂気とも言える行動に移る者。敵味方渾然としたなかでそれぞれの思惑やかけひきが蜘蛛の巣のように張りめぐらされ、ページをめくる手が止まらない。
それにしても主要人物だけで10人以上。これだけの人間の考えをそれぞれのキャラクターの性格に沿って矛盾なく動かし、ストーリーを積み上げていくとは、漫画家の脳みそはどうなっているのだろうと思う。
狂気の世界が自分のすぐ後ろに感じられる、リアリティがある異世界マンガ。すでに完結しているので、ぜひイッキ読みしてほしいです。
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