365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月14日は加藤精三の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『巨人の星』第14巻
梶原一騎(作) 川崎のぼる(画) 講談社 ¥370+税
本日2月14日は、声優、俳優、ナレーターとして活躍していた、加藤精三の誕生日だ。
1950年代から活動を開始した加藤は、アニメ・特撮をはじめとする多くの作品で、その渋い声を活かした重厚な芝居で2014年に死去するまで第一線で活躍し続けていた。
そんな彼を代表するキャラクターのひとつに、『巨人の星』の星一徹がいる。
息子である主人公・星飛雄馬に手段を選ばぬ徹底したスパルタ的指導を行い、彼を一流の選手へと鍛えあげていくその姿は、昭和の厳しい親父像を象徴する存在として、人々の心に強烈な印象を残した。
今回は、そんな星一徹の厳しい父親ぶりを象徴する1エピソード、単行本第14巻の「不死鳥」を紹介したい。
中日のコーチとして、アームストロング・オズマに飛雄馬の放つ大リーグボールへの必勝法をしこんだ一徹。
大リーグボールを打たれて心身喪失状態となった飛雄馬は、幼き日を家族とともに過ごした長屋を訪れていた。
と、そこには、亡き妻・春江の遺影に向かって語る一徹の姿が。
「背番号84である自身を倒せば、飛雄馬の背番号16に84が足され、100になる=完全な野球人になることができる」と語る一徹。
それを影で聞いていた飛雄馬は、父の目論見に気づいて驚愕するも、そのプレッシャーに耐えられず、夜の闇のなかへとかけ出していってしまう。
だが一徹は、飛雄馬が感傷に誘われ、長屋を訪れていたことに気づいていた。
飛雄馬がいた場所を見てニヤリと笑うと、ウジウジしていれば84が16を飲みつくし、こちらが100になるまでだと豪語し、高笑いする。
これは、飛雄馬への宣戦布告でもあったのだ。
そんなとことん厳しい一徹を象徴するような本エピソードは、アニメでは120話にあたる。
言いまわしこそ若干ソフトにアレンジされているものの、あざ笑う一徹をバックに、逃げるように走りさる飛雄馬の画で終わるラストシーンなど、原作に負けず劣らずな、強烈な印象を残す回となっている。
現在はネタ的な扱いを受けることの多い『巨人の星』だが、オンリーワンの熱い物語であることも忘れてはならない。
この機会にマンガとアニメを見返して、じっくりと浸っていただきたいところ。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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