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7月11日は「少年ジャンプ」創刊の日 『男の条件』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/07/11


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『男の条件 復刻版』
梶原一騎(作)川崎のぼる(画) 集英社 \1,620+税


47年前の今日、7月11日は「少年ジャンプ」の創刊日。
初年は隔週だった「ジャンプ」は、ちばてつやのプロダクション出身の梅本さちおによる『くじら大吾』と、貝塚ひろしの野球マンガ『父の魂』を看板連載としてスタート。
また、創刊年内には貝塚ひろしが失踪した際の差しかえで、新人の本宮ひろ志が起用され『男一匹ガキ大将』で一躍人気に、永井豪は『ハレンチ学園』をヒットさせ……とトピックにこと欠かない。
これら黎明期は基本的に劇画とマンガのハイブリッドで、熱量と泥くささにエッセンスが見てとれる。

今回は、そんな「ジャンプ」の”原液”を抽出した作品をおすすめしたい。
これも創刊年に連載が始まったもので、梶原一騎・川崎のぼるの『巨人の星』コンビによる漫画家マンガ、『男の条件』である。

ある人気マンガに描かれた機械の描写がぬるかったのを納得できない旋盤工の少年が作者のスタジオに押しかけるところから物語は幕開ける。
少年は、細部まで気持ちをこめて描いてほしいと訴え、ひと騒動起こす。そこで売れない児童マンガ作家に出会い、その高い志に感動を覚えて弟子入り。師弟は一旗あげるため苦難の道を進んでいく。

本作はよく『まんが道』の梶原マンガ版とたとえられる。
ただ、デビューして実作を重ねるコンビを描く『まんが道』に対し、『男の条件』は9割がた、師匠がマンガを世に出せない状態が続く。
本作の軸は、稼ぎや目先の実作より、信念を優先させる創作者の生き様なのである。
そんな主題を象徴する会話が序盤にある。主人公とライバルになる若手との議論だ。

「まんがは 読者の心まで深入りせずとも はなやかに目をたのしませればいいというのがぼくの主義なんでね!」
「心だ!! すくなくともおれの友だちの細川のように“男の花道”の主人公を自分の生きかたの手本にしている読者には」
「目だ!! そのきみの友人もまず主人公のみかけのカッコよさにあこがれたからこそ自分のアイドルにする気にもなったのさ」
「心だ!」
「目だ!!」

これは「少年ジャンプ」そのものが抱える核心でもある。
創刊から30年近くかけて最盛期650万部以上まで発展した「ジャンプ」。現在発行部数は減っているといっても、まだ200万部台という途方もない数字である。
その数字に、創刊年の“原液”は問いかける。
目か? 心か?
おそらく実際は両方を抱えこむことにあるのだろう。

そんなことを考えるきっかけが得られる『男の条件』、さいわい復刻版が2013年に出ており入手しやすい。
実写映画公開を控える近年の「ジャンプ」漫画家マンガ『バクマン。』でも、主人公のひとりサイコーが好きなマンガに『男の条件』をあげたり、河川敷で原稿を破り捨てるシーンが『男の条件』劇中の一幕を下敷きにしたりしている(ちなみに『男の条件』復刻版の帯には『バクマン。』作者の大場つぐみがコメントを寄せた)。
理念に注力したがゆえにテーマが錆びず、今なお参照に値する名古典なのだ。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。プリキュアはSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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