人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、池辺葵先生!
間取り、お風呂の大きさ、窓から見た風景、キッチンの使い心地……。
積み重なる思いに応えてくれる“私だけの家”を探し、今日もモデルルームめぐりに余念がない居酒屋の社員・沼越さん。そんな彼女を中心に、切実な思いと理想が交差する群像劇『プリンセスメゾン』が話題だ。
いつも当たりまえに過ごしている場所に対し、「働く女子にとって“家”っていったいなんだろう?」と立ち止まって考えさせてくれる本作。
本日、2月12日(金)に最新第2巻が発売され、今回その発売されることを記念して、マンガについてや、現代の女子のあり方について、作者の池辺葵先生にうかがった。
いま注目の「モチイエ女子」がテーマ! その女性たちを描こうと思った理由とは?
——本日はよろしくお願いいたします。まずは、本作執筆のきっかけをお聞かせ願えますか?
池辺 担当さんから「モチイエ女子」さんの企画のお話をいただいて、ぜひやってみたいと思ったことがきっかけです。
——本作はwebサイト「やわらかスピリッツ」と「モチイエ女子project」の両方で読めるんですよね。しかも後者では限定秘話が公開されていて。
池辺 はい。いろんな方に読んでいただけてうれしいです。
——近年は、働きながらひとり身で家を買う女性も珍しくなくなってきましたし、本作でもそんな女性が次々に登場します。企画を具体化していくにあたり、こういった形の現代女性の群像劇にしようと思ったのはなぜでしょう?
池辺 共感できる部分が多かったからですかね。
——具体的にはどんな部分に?
池辺 迷ったり、葛藤したり、ネガティブになったり、ポジティブになったり、情けなくなったり、諦めたり、奮起したり、見栄をはったり、素直になろうと努力しようとしたりするところでしょうか。
——なるほど。そういった現代女性を、先生はどのように見ていらっしゃるのでしょうか。
池辺 特に観察しているわけではありませんが、現代女性に限らず、マンガでは人間賛歌を描きたいと思っています。以前から「故郷」とか「居場所」というものをテーマにした作品を描きたいと思っていて。今回のお話はそれに通じるテーマだと感じましたし、そのなかでもマンション購入は自分には考えつかない方向性だったので、チャレンジしたいと……。
——「マンション購入は考えつかなかった」とのことですが、先生のまわりの方にモチイエ女子がいたり、「将来、家を買いたい」みたいな話題がのぼったことはなかったということでしょうか?
池辺 ないです。この話を書くにあたっての取材で初めて、マンション購入に興味を持っている方が、思ったより多くいらっしゃるんだなと、その時知ったくらいです。女性のためのマンション購入セミナーにも行かせていただいたのですが、年齢層も職業もバラバラの女性がたくさんいらっしゃっていて、思ったより参加しやすい雰囲気でした。
——沼越さんが家探しをする一貫として、マンション説明会やマンションギャラリーの描写 が出てきますが、取材時のエピソードなどありましたか?
池辺 そうですね……。講師の方が「マンションは誰でも買える」とおっしゃっていた言葉が印象的でずっと残っています。
——おぉ!
池辺 もちろん、条件はあると思いますよ。「モチイエ」というとハードルが高いイメージがありますが、想像しているよりは誰でも、ということかと思います。マンションギャラリーでは、お風呂の広さとか天井の高さとか、キッチンの水回りの充実度に感動しました。ひとつひとつに知恵や技術、細かな気配りがたくさん詰まっているんだな、と。説明してくださる方のマンションに対する情熱も伝わってきました。
——マンションギャラリーに行くと、わくわくしますよね。具体的にどんな気配りや技術が印象に残りましたか?
池辺 まず、風呂釜自体が賃貸とは全然違う大きさで、そのなかに段差があるんです。ため湯を節約するためなんですけど、その段差が半身浴をするのにもよさそうでした。石鹸やシャンプーボトルなどを置く台が鏡の下に平台としてついていて、デザイン的にすっきりしてキレイだし、掃除もラクそうだなあとか。あとはキッチンの蛇口には最初から浄水器が備え付けてあるとか、シンクの下の収納スペースが音を立てずにしまってくれるとか、床に引き戸のドアのレールがないのですっきりしているとか……。
——小さなことですけど、毎日のことなので、そういうことでストレスが溜まらないのはいいですよね。
池辺 不便さを受け入れることも大事だと思いますが。
——では、キャラクターについてもうかがいたいのですが、本作には沼越さん、マンションギャラリー勤務の要さん、阿久津さんの3人の女性が登場します。それぞれのキャラクターはどのように作られたのでしょう?
池辺 担当さんと話しながら決めていった感じですね。絵柄に関しては、沼越さんは皆に愛される人にしたくて……。私自身、「今回は何か変えたい、もっとたくさんの方に読んでもらえるようにしたい、イラストっぽいポップな感じがいいのかなあ」って、うだうだ言っていた時に、担当さんがいろんな漫画を見せてくれたんですね。その時に、「ポップっていうと頭身が低いって感じですかね」的なことをふとおっしゃっていて。それを聞いて、私は頭身を低くしようって思って。担当さんができあがってきた絵を見て「これが池辺さんのポップなんですね、いえ、安心しました。池辺さんらしいままで。」とおっしゃっていたのを覚えています。「あれ? ポップになってない? 私の絵、そんなに頑固?」みたいな。私的にすごくおもしろかった出来事です。
——誰かモデルになった方はいますか?
池辺 それはないです。方向性を決めて描き進めていくうちに……という感じです。
——特に先生が気に入っている、もしくは思い入れのある女性キャラがいたら教えてください。
池辺 どの人も好きです。どの女性にも思い入れがありますね。