日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『プロメテオ』
『プロメテオ』第1巻
北原雅紀(作) 小野洋一郎(画) 講談社 ¥600+税
(2016年1月22日発売)
「ビッグコミック」にて好評連載中の『すばらしきかな人生 -ふたたび友郎ー』をはじめとして、ハートフルな人間ドラマを紡いできた原作者・北原雅紀が、『ブッシメン!』の小野洋一郎とタッグを組んで贈る問題作。
戦場カメラマンとしてシリアに赴いた真壁香織は、さっそく戦闘に巻きこまれてしまう。
現地案内人のアリに助けられ、一命を取り留めた彼女は、自分が乗っている車の後部座席に日本人がいることに気づいた。
彼の名は九条勇。「世界の紛争地域で使用されている武器の8割は九条が絡んでいる」と言われる武器商人だ。
金さえ積まれればテロリストにも武器を売る九条に衝撃を受けた香織は、彼がなぜ武器商人になったのか、その理由を確かめるために行動をともにすることを決意する。
九条は武器商人というだけでなく、戦闘のスペシャリストでもあり、絶体絶命のピンチを幾度となく鮮やかに切りぬけていく。
こうしたスケールの大きなアクションシーンと武器商談のスリリングなかけひき、最新鋭の武器解説などが加わって重厚なストーリーが展開されていく。
2014年に事実上の武器輸出が解禁され、2015年には安保法が成立した今だからこそ生まれた物語。はたして“九条”という皮肉な名を持つ男は何者なのか?
「人間がいる限り戦争はなくならない。戦争があるかぎり武器はなくならない」と言いきるダークヒーローが、平和ボケした日本に銃口を突きつける。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。