日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『信長協奏曲』
『信長協奏曲』第13巻
石井あゆみ 小学館 ¥457+税
(2016年1月12日発売)
2014年に放送された小栗旬主演のドラマ版が高視聴率をマーク、その勢いをかって今年1月23日に封切られた劇場版が興行収入20億円を短期間に突破するなど、マルチメディア展開も絶好調のタイムスリップ戦国絵巻『信長協奏曲(のぶながコンツェルト)』。
劇場版は本能寺の変がメインだが、コミックス最新刊となる第13巻は、信貴山城の戦い・決着編からのスタートとなる。
本作における松永久秀といえば、信長の身代わりとなって生きるサブロー(もともとは平成のスチャラカ高校生)と同じく、現代日本から戦国の世にタイムスリップしてきた人物。
平成の世ではヤクザとしてブイブイ言わせていただけに、高校生の面影を残すサブロー=信長の軍門に下るのはプライドが許さない。
それでもずっと、つかず離れずの存在だったが、石山本願寺に呼応して信長に謀反。
史実どおりに壮絶な爆死をとげる。
サブローとしては、同じ立場で話が出来る数少ない人物だっただけに、どうにかして降伏してもらいたかったが、かなわなかった。
歴史にうといサブローは知るよしもないが、ここまで大きく歴史が変わっておらず、時系列的にはあと5年も経たずに本能寺の変を迎えることになる。
いまだに本能寺の変の首謀者が明智光秀ではなく“あいださん”だと思いこんでいるサブロー。このまま天下統一に突っ走り、運命を受け入れるのか? それとも抗うのか?
松永の死を悼みながら「生きた場所の土に還るべきなんだろうね…」と帰蝶につぶやくその横顔は、これまで見せたことのない物憂げな表情だ。
ふだんは覆面姿の光秀と信長の顔がそっくりだと気づく人たちもちらほら出現し、光秀、秀吉、家康の思惑も絡んで事態が複雑化。
物語は終局へ向けて走りだす。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。