『淀川ベルトコンベア・ガール』第3巻
村上かつら 小学館 566
7月7日の今日は七夕。そして「川の日」でもある。
七夕から「天の川」が連想されること、また7月は「河川愛護月間」であることから、近代河川制度100周年にあたる1996年に制定された。
川は古来より、さまざまな意味を持つ場所だ。
たとえば供養の場であったり、けがれをはらう神聖な場であったり。氾濫することのないようにと、川の神をまつる行事も全国各地にある。
そんな川にかかる“橋”も、昔から一種の「パワースポット」と考えられてきた。不思議な伝承が残る橋は、いまも全国各地に存在する。
村上かつら『淀川ベルトコンベア・ガール』にも、「願いがかなう橋」が登場する。
本作の主人公・かよは16歳。家庭の事情から高校には進学せず、“あげ工場”で働いて生計を立てている。
ベルトコンベアを流れてくる油あげをひたすらさばいて日が暮れる。工場の寮で大人たちに囲まれて暮らす彼女にみんなやさしくしてくれるけれど、心はどこか満たされない。
毎朝、寮から工場へ通う淀川沿いの道を歩くとき、すれ違う女子高生たちの楽しそうなおしゃべりを耳にするたびにさびしさは募るのだ。
「淀川大橋の真下で、上りと下りの電車が行き交う間に大声で3回願いごとを言い、その声がかき消されなければ必ずかなう」
そんな噂を聞いて、かよは橋の下で叫ぶ……「ともだちが、ほしい!」と。
はたしてかよの願いが通じたのか、工場に同い年の美少女・那子が新人バイトとしてやってくる。
仲よくなりたいと願うかよとは裏腹に、彼女はなかなか心を開いてくれず……。
不器用でおっとりしているが、芯に強いものを秘めているかよ。一方の那子は、医学部を目指す秀才で、高校では人気者グループに属しているけれど、じつは周囲に合わせて自分を偽っている。
対照的な2人が少しずつ接近しながら、お互いのことを、同時に自分の心の内に向き合っていく。新しい世界に踏み出そうとするときに伴う痛みを丹念に描いた、友情と成長の物語だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」