365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月23日は富士山の日。本日読むべきマンガは……。
『小学館文庫 蒼の封印』第1巻
篠原千絵 小学館 ¥543+税
2月23日は「2=ふ」「2=じ」「3=さん」の語呂合わせから「富士山の日」として、2009年12月25日に静岡県の条例において制定された。
県内の一部の学校は休みになるそうだ。
ちなみに、約2年後の2011年12月22日には、山梨県の条例でも富士山の日を2月23日、と定められている。
なぜ同時ではなかったのだろうか……いや、この問題は深入りすると根深い「富士山はどちらの県のものか」論争の火種になる(かもしれない)ので、ひとまずおいておく。
ともあれ、5つの条文から成る「富士山憲章」(こちらは静岡・山梨両県にて定められている)の理念をもとに、富士山の自然を学び、恵みに感謝し、後世に引きつぐことをより意識する日とされる。
さて、本日紹介する『蒼の封印』。
『天は赤い河のほとり』や『夢の雫、黄金の鳥籠』などでも知られる篠原千絵の長編作品だ。
主人公の桐生蒼子(きりゅう・そうこ)は転校してきた途端、体調がすぐれないうえに、人が突然消失する不可解な事件に直面し、困惑する。
そんな蒼子の前に「西家の白虎」と名乗る青年・西園寺彬(さいおんじ・あきら)があらわれ、蒼子は人を食う鬼の一族「鬼門」の長となる「東家の蒼龍」だと告げられ、倒すべき存在として命を狙われる。
彬もクールなイケメンであり、さまざまなできごとを経て蒼子とお互いに惹かれあうのだが、蒼子は鬼門を統べる者としての責任で板挟みになり……。と、伝奇ミステリあり、ホラー描写あり、バトルあり、寸止めラブロマンス(?)ありと息もつかせない疾走感が味わえる。
謎解きや、力を得るために日本じゅうのいわくありげな地をめぐるのも興味深い。
『蒼の封印』と富士山との関係については、ネタバレになってしまうため、詳しくは伏せておく。
だが、ともすれば最後のひとりまで狩りあう血みどろの死闘になりそうな設定ながら、ラストの策が選ばれるのは、やはり少女マンガらしい。
蒼龍は、人間を魅了させながら生命も魂も奪う美しい鬼として描かれている。
富士山は莫大なエネルギーを内包しており、ひとたび噴火すれば大きな災厄を招く。ふもとに広がる青木ヶ原の樹海も、うっそうと茂った深い森だ。
しかし、その恐ろしさを秘めているからこそ神々しくそびえるのではないか。
静岡県民や山梨県民のみならず、日本一の霊峰へ共存を願いつつ、あらためて畏敬の念を抱いてみよう。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。