日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『火葬場のない町に鐘が鳴る時』
『火葬場のない町に鐘が鳴る時』第4巻
碧海景(案) 和夏弘雨(画) 講談社 ¥602+税
(2016年2月5日発売)
のどかな田舎町、三途洲(みとず)町。
夕方6時になると、町からはいっせいに人がいなくなり、すべての家が鍵をかけ、カーテンを閉める。
「夕方6時を過ぎると 町には不思議な鐘が鳴る その音を聞いたら夜明けまで絶対 外へ出てはいけない」
「冥奴様(めいどさま)が迎えにくるから」
日暮れに遊ぶ子どもを戒める習わしのような迷信に、不明瞭な手がかりで立ち向かわざるを得なくなった少年を描く、日本土着型ホラーだ。
作品内では、とにかく夜が長くてしかたない。
始まってもう4巻めなのに、まだ2日しか経っていない。
主人公の卯月勇人(うづき・ゆうと)は、10年ぶりに帰ってきたため、三途洲町のルールを知らない。
彼は夕方6時の鐘が鳴った後、闇のなかにうごめく冥奴様から逃げながら、帰ってこない父親を探すため奔走する。
とはいえ、どこに父がいるのかまったく手がかりがない。冥奴様がなんなのかさっぱりわからない。
思いこみが激しい彼は、落ちていたよくわからない地図や、人間かも「しれない」存在への声がけで、手探りで前に前に進んでいく。
正直うまくいっているとは言いきれない。
だが、「このままでは父を見殺しにしてしまう」「助けてくれた友人が冥奴様に追われるわけにはいかない」という、「やるしかない」状況なのもたしか。
命を書けるには、勇人はあまりに冥奴様のことを知らなさすぎて、ハラハラする。
第4巻に入って、冥奴様を調べているノンフィクションライターの冬雨静孝(とうざめ・しずたか)が登場することで、一気に冥奴様の謎の核心に迫った。
勇人と静孝は冥奴様の正体を知るため、「奥三途洲」と呼ばれる廃墟地区に足を踏み入れる。
ただ、事実を知るのと、逃げきれるかどうかは別もの。
まだ夜は、明けない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」