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『ラストメンヘラー』第1巻 伊瀬勝良(作) 天野しゅにんた(画) 【日刊マンガガイド】

2016/03/22


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ラストメンヘラー』


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『ラストメンヘラー』第1巻
伊瀬勝良(作) 天野しゅにんた(画) 双葉社 ¥620+税
(2016年2月12日発売)


「メンヘラ」という言葉はなかなかに使いドコロが難しい。
ネットでは、他称の場合は悪口に、自称の場合は自己の苦しみの表明として、使われていることが多い。
一方、この作品のなかでの「メンヘラ」は、自称・他称ともに「ふつうではない」という意味がもっとも近いだろう。

五十嵐すみれは、右手首に数多くのリストカットの痕がある少女。
だれも自分の苦しみを理解してくれない。自分は「ふつう」になれない。
放課後はいつも、人が来ない第一理科室にこもり、カミソリで手首に傷をつけていた。

彼女のことが好きな少年・中原要(なかはら・かなめ)。
彼の左腕には、小学校の図工で誤って切ってしまった、傷があった。
要は、すみれに近づきたい一心で、手首を見せて嘘をついた。
「僕もきみと同じ ふつうじゃない人間なんだ」

こころの病気をわかちあっているふりをする要は、恋愛に惑う少年の姿として、とても共感できる。
どんな手を使ってでも好きな相手とともにいたいなら、まあそういうこともあろう。

しかし、こころの病に対しての嘘をついて言い訳する様子には、嫌悪感がわく。性の欲望に飲まれ、嘘に嘘を重ね、彼女を独占しようとする様子は、あまりにも卑怯だ。

2人をつなぐのは、共感と理解。
肌を重ねあって、不安を解消しあっているものの、恋人ではない。

彼の嘘が暴かれるのは、時間の問題。嘘をついた相応の痛みを受けることになるかもしれない。
ただし、彼がすみれを好きな思いは本物。
一番のハッピーエンドは「すみれのこころの病が解消されて、ふつうになること」だろうが、ひとつ立ちはだかる壁に、この作品は向かうようだ。

それは「ふつう」ってなんなのか、というあまりに難しい問いだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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