日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『シノギゴロシ ~闇稼業仕置人~』
『シノギゴロシ ~闇稼業仕置人~』第1巻
山田一文(作) いわや晃(画) 秋田書店 ¥562+税
(2016年2月19日発売)
山口組の分裂騒動で市街戦の危険性も増してくるなど物騒な毎日ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
暴対法が施行されて20年余。ヤのつく職業の方々が駆逐されるわけもなく、きょうも元気に法の目をかいくぐりながら商売繁盛!
本日紹介する『シノギゴロシ』は、我々の身近な場所で行われている反社会勢力のシノギを潰すために現れた謎の仕置人を描く、新しいタイプのアクションエンタメであります。
女子高生のアスカがギトギト系のラーメン屋で出会った若い男・矢野統爾(やの・とうじ)。彼は弱者を食いものにするヤクザのシノギを、圧倒的・徹底的な喧嘩で制圧する“シノギゴロシ”だった。
スーツ姿にマフラーをなびかせ、ボルサリーノを粋に決める時代錯誤も甚だしいキザ男の矢野は、血相を変えて襲いかかってくるヤクザたちをワンパンでKO。
でもって「君とボクでは流れてる時間の速さが違うんだよ」なんてセリフを臆面もなく言い放つ。
このように主人公のキャラ設定は多分にファンタジー色が強いが、ヤクザのシノギ自体は非常にリアル。
今現在、どのような人たちがヤクザに狙われやすく、どのような仕組みでミカジメがとられ、どのような組織構造で動いているのか……といったことが、わかりやすく描かれている。
原作者の山田一文は闇社会ジャーナリストとして活躍中であり、“現場の事情”や“直近の事件”などをかみ砕いてストーリーに織りこんでいるのだ。
この調子で今後もどんどんニュータイプのヤクザビジネスが紹介され、そのつどシノギゴロシが颯爽と制圧していくことになるのだろう。
シノギゴロシの華麗な喧嘩を楽しむだけでなく、よからぬ輩のワナにハマらないための教科書にもなりそうだ。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。