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『至福の暴対レシピ』第3巻 西条真二 【日刊マンガガイド】

2015/06/06


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『至福の暴対レシピ』第3巻
西条真二 講談社 \565+税
(2015年5月1日発売)


『鉄鍋のジャン』で知られる西条真二が、ヤクザと政治(=暴力とカネ)のドロドロの世界にグルメを絡めて描く意欲作。 ……と、気持ちとしては絶賛したいのだが、いわゆる“打ち切り”とあいなってしまった。
しかし、これがまるっきりダメな作品かといえば、決してそんなことはない。むしろ、いろんな部分でアクセルを踏みすぎていて、見どころには事欠かない。

主人公の蘇我スギオは、もともと暴力団の構成員だったが、とあるできごとがきっかけで「人の心を動かすのは料理」だと思うに至り、料理人としてのスキルを磨く。
初期のエピソードでは、暴力がらみのトラブルを料理で解決……という、ある意味「らしい」展開だったが、そこに暴力団と癒着する警視庁のキャリアや政治家が絡みはじめると一気に物語はヒートアップ。
そして、これまでの西条作品でもおなじみの「奇抜な料理と立派なお胸のおねーちゃん」で味つけされた痛快グルメバトルかと思っていたら、バイオレンス描写も性的な描写もシャレにならないダークな方向へまっしぐら!

逆に料理に関しては奇策ともいうべき手法は影を潜め、蘇我スギオが敗北の辛酸をなめることも少なくない。それだけに料理勝負の行方は常に緊張感がつきまとい、「お約束」とはまったく無縁の結末がおもしろい。
たとえば、最新刊の「B級グルメ対決」では、スギオ本人が負けを覚悟していたのに「客のレベルが低くて、単に目先の新しいメニューに票が集まる」という、まったくうれしくない要因で一勝。
そういったリアルさは、このジャンルのマンガに親しんでいる人ほど新鮮に感じるだろう。

そして、やたらとキャラの立ったヤクザや黒い政治家など、そちらでは西条真二らしさがブレーキ壊れた感じで爆発していて「いいぞ、もっとやれ!」と楽しみにしていたのだが、突然の打ち切りは至極残念。
いちおう、単行本では連載時には描かれなかった結末が加筆されているが、ここは駆け足という感は否めない。
西条真二といえば、直近では『鉄牌のジャン!』なる麻雀マンガが話題でしたが、また過激な新作を期待しております!!!



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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