日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『美食探偵 明智五郎』
『美食探偵 明智五郎』第1巻
東村アキコ 集英社 ¥419+税
(2016年2月25日発売)
ご存じ、東村アキコの新連載。タイトルまんま、グルメな探偵・明智五郎を主人公としたグルメ×ミステリもので、昭和の高度経済成長期に量産された大衆娯楽ミステリの東村版オマージュともいえるものだ。
すでに『東京タラレバ娘』、『雪花の虎』、『海月姫』といった膨大な連載を抱えてながら、よくもまあ新連載って……と驚愕を禁じえないが、本作に関していえば、これだけの仕事量をこなしている売れっ子作家だからこその「遊びの産物」なのだろう。
いわずとしれたグルメである東村先生だけに、楽しんで描いてるんだろうな~という感じがうかがえて楽しい。
クールでキザな明智五郎と、明智の行きつけのケータリングお弁当屋さんのギャル・苺ちゃんの凸凹コンビっぷりは、安定の東村ワールドなおもしろさ。
もともと明智の依頼人だったはずが「官能的で美しい殺人」の魅力にとり憑かれ、明智の宿敵となる謎の美女・マリアとの駆け引きも楽しい。
もともと、ネロ・ウルフから酒島章まで、グルメとミステリはじつは相性がよく、料理とトリックが巧妙に絡んだストーリーも王道ながらツボを押さえたクオリティで、著者の娯楽作家としての「うまさ」にあらためて感心させられる。
欲をいえば、せっかくのグルメものだし、もうすこし食べものをシズル感たっぷりに扇情的に描いてくれれば、テーマ的にもぐっと魅力が深まるはず。
そのあたりも含めて、今後の展開に期待!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69