365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月24日は、競走馬タケホープの誕生日。本日読むべきマンガは……。
『エデンの東北』第7巻
深谷かほる 竹書房 ¥590+税
きょう3月24日は、競走馬タケホープの誕生日である。
1970年の同日に北海道・谷川牧場で生を受けたタケホープは、1973年のクラシック戦線を戦った。
この世代の中心的存在は、第一次競馬ブームの牽引者・ハイセイコーであった。
公営・大井競馬場でデビューしたハイセイコーは、無敗のまま6連勝を飾ると、「地方競馬の怪物」として鳴り物入りで中央に移籍。そのままクラシック一冠目の皐月賞を快勝した。
地方出身ながら中央の晴れ舞台で活躍する姿は、集団就職で上京した団塊の世代にとって希望の星となった。
作家の寺山修司はのちにハイセイコーの引退に際して「さらばハイセイコー」の詩を著しており、ハイセイコーは国民的なアイドルホースだった。
中央で重賞4連勝で迎えた日本ダービーでは、ハイセイコーは単勝支持率66.6パーセントの断トツの1番人気。
だれの目にも「ハイセイコーのダービー」と映っただろう。
それを覆したのが、9番人気だったタケホープである。
府中の長い直線でハイセイコーを差しきって先頭でゴールインを果たすと、タケホープの単勝5110円は歴代2位、2着馬イチフジイサミとの枠連9560円は歴代トップの高配当額となった(いずれもダービー記録)。
だれもが鉄板だと思ったレースに、大波乱が起きたのである。
このレースで大損をしてしまったのが、深谷かほる『エデンの東北』に出てくる「お父さん(イワオ)」だ。
『エデンの東北』は、70年代の東北を舞台にした物語である。4人家族の田舎暮らしは、ほのぼのとしているだけではなく、田舎特有の人間関係の煩雑さもあり、おおらかさとデリケートさがないまぜになっているようなエピソードが満載。
70年代の風俗・習慣もふんだんに描かれており、あらゆる面に懐かしさを感じるだろう。
単行本第7巻収録の「さ~らば~、ハイセイコ~」の回では、お父さんは飲み会の席でハイセイコーの写真を見せられ、「絶対確実」の声に乗せられて、有り金すべてを預けてしまう。
しかし、結果はご存じのとおり。レースは波乱の結果となり、お父さんの賭け金もすべてパーになった。
「ハイセイコーの敗れたダービー」は、70年代を代表するほどの“事件”であったことが本作からもうかがい知ることができる。
そしてその立役者こそが、タケホープであったのだ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama